みなさんは、自分の町の防災地図(ハザードマップ)を見たことがありますか?防災地図は見たことがないなという場合でもご自宅周辺の地図は見たことはある方は多いのではないでしょうか。
一方、ネパールの地図事情はどうでしょう。「あなたの家はどこ?」と聞いて、地図上で正確な場所を一瞬で指させる人はほとんどいません。字が読める、読めないに関係なく、地図を読む習慣がないのです。道順を聞いても、「あの道をこういって、茶店の角を右に曲がると大きなピンクの家があるからそこを。。。」と口頭での説明になります。
そのような中で、私たちは2015年大地震の被災地域のカトマンズ盆地内で防災活動を進め、その一環で防災地図を作りました。2017年度に地域住民たちと街歩きをして、地震発生時に危険な個所と同時に避難できそうな広いスペースや区役所といった大切な建物を確認しました。それを慣れない2次元の空間、つまり地図に落としこむ作業をして、かつ地震対策技術専門のネパールのNGOの協力で地震の被害が大きい可能性のある地域を重ね合わせて防災地図ができました。この時の作業で初めて、自分の地域を地図として認識した人も多くいました。
これらの地図はすでに活動地域内数カ所に張り出しています。しかし、場所によっては、下の写真のように住民が見てくれている様子がありません。
そこで、この地域の住民がメンバーの災害管理委員会で議論となり、次のことが決まりました。
① 読みづらいところにある防災地図はもっと人が立ち止まって見られる場所に変えよう
② 防災地図を見てもらうのを待っているだけではだめ。地図が読めない人の方が多い。だから、防災地図の前でワークショップを開いて人を呼んで一緒に地図を読む機会を作ろう
どちらも当たり前のことかもしれません。最初からもっといい場所に貼るよう指示していればとも言えます。実際、地図を貼った場所の写真をパートナー団体のスタッフから見せてもらったときは、「うーん、これで人が読むかな」と不安になり、ネパール事務所現地職員ともこれでは意味がないのではと話していました。でも、今回、会議に参加させてもらった私から「地図の場所を変えようよ」という前に、自然とそのような流れになり、アイディアが出てきたのはむしろよかったと思っています。自分たちで気付いて、自分たちで改善すると決めたことは自分事になるからです。
そうは言っても、本当にアクションを取るかどうかは別問題。これからは「で、場所変えてみた?何か変化はあった?」と忘れずに聞いていくのがシャプラニールの役目です。
でも、この会議の解散後、委員会のメンバーたちが見にくい地図の前に集まって「どうするかね」と話を始めていたので、期待してみてもいいかと思っています。
みなさんも、自宅や勤務先がいざという時にどのような災害でどのような被害を受ける可能性があるのか知るのに役立つので、ぜひ、各地方自治体のウェブサイトで探してみてください。
ネパール事務所長 勝井裕美