これは私が大好きな本のタイトルである。イギリス生まれアメリカ在住のインド系作家ジュンパ・ラヒリの作品で、人生の何気ない瞬間に感じる思いを巧みに描いた美しい短編集だった。
ずいぶん前に読んだのではっきりとは覚えていないが、確か登場人物のほとんどがインド人。ただ、インド生まれの一世とアメリカ生まれの二世など、その生い立ちや現在の生活状況が多様な人物が、アメリカという地でそれぞれの思いを抱えて生きていく様を淡々と描写している。私が強くひかれた理由の一つは、登場人物がアメリカとインドという二つの世界になんとか折り合いをつけようとする姿が、バングラデシュと日本の生活を経験している自分に重なったのだろうと今になると思う。彼女の両親がベンガル人ということで、随所にベンガル語やベンガル人らしい振る舞いが描かれているので、その点でも親しみを感じながら読んだものだ。
とまあ、なぜこの本のことを書いたかというと、今日家に帰ったら停電だったので、ろうそくを点けて灯りを見ていたら思い出したという次第。
表題にもなった「停電の夜に」は本当に美しい(哀しくもある)作品なので、チャンスがあったら是非読んでいただきたい。ちなみに、ジュンパ・ラヒリはこの後“The Namesake”という本も出している。こちらもお勧め。