以下事実関係や表現などに誤りがあれば、ご指摘頂きたい。
表層的な理解しか出来ていないためこれまで政治的な話は避けてきたが、どうしても避けられないくらい歴史的なことが昨夜実現した。主要政党とマオイストとの間で和平協定が調印されたのである。1996年マオイストによる人民戦争が始まって以来、治安部隊とマオイストの衝突の中で実に1万人以上の命が失われてきた。政府の力が及ばない(この表現は正しくないかもしれない)農村部で影響力を伸ばし、その大部分がマオイストのコントロール下にあったと言っても過言ではない。武器を持って半ば強制的に人々を動員してきたそのマオイストが、今回の和平協定で政党として正当性を得たわけである。
<写真は今朝の市民抗議の様子>
直接間接の圧力はあっただろうが、ネパールが他国の仲介を得ず自力で和平合意にこぎつけたことは評価すべきだが、今の状況を見ていると手放しで喜ぶ気にはなれない。例えばマオイストによる「税金」や寄付金の徴収、警察行為を含めた法執行。金曜日にカトマンズで行われる大集会のためにカトマンズ盆地外から動員された人々へ宿や食事を提供すること。拒否すれば記録されるため、後々のトラブル(報復)を恐れて人々は断ることができない。武器がなくても人を動かす方法を知っている彼らが表舞台にでてきたらどういうことになるのか、考えるだけで不安になる。
和平合意が調印された今朝、パタンではマオイストに抗議する市民のデモが行われていた。宿泊などの便宜供与強制に反対する人々がマオイストの事務所の前にかなりの数集まっていた。非暴力的な集まりだった様子だが、交通は完全に封鎖されかなりの時間影響がでていたようだ。とにかく、今回のことはマオイストに対して人々が全面的な支持をしているわけではないという事でもある。
<写真:マオイストの事務所の前に集まった人々>
帰宅する頃には渋滞もほぼ解消されていたが、10分ほど歩くと今度はマオイスト支援者のデモ行進にぶち当たった。デモ行進の後ろに車の長蛇の列ができていたのを見て、ほとほとうんざりした。日本でないのをいいことに日本語で大声で叫んでしまった。「もうっ、いい加減にしてよ!」なんだかんだ言っても、私はある時期がくればこの国を離れることになる。気になるのは私たちが支援している子どもたを含めたネパールの人々のことだ。子どもたちの未来はこの国の将来にかかっている。今回の和平合意が皆が希望のもてる新しいネパールへの第一歩となるよう心から祈るしかない。
スタッフなどからの情報によると、明日10日(金)に予定されていたマオイストの大規模集会は中止となった様子。通常業務ができることにほっとしつつ、集会に参加するためにカトマンズにやってきた人たちはどうするんだろう、と思ってしまった。