「被災した人たちのために、せめて励ましのメッセージだけでも届けることができないか」
Bengal Toursの代表を務めるマスッド氏の発案で準備を進めているという知らせを受け、週末を利用して有志7名(バングラデシュ人5名、日本人2名)でバゲルハット県ショロンコラ郡、サウスカリユニオンに行ってきました。ここは2007年11月に巨大サイクロン「シドル」が襲来し、シャプラニールがJJSと組んで緊急救援を行った場所でもあります。もう一人の日本人は、「志ネットワーク」(バングラデシュ人を対象とした日本語クラス)で日本語を教えている岡林さん。
震災と津波の発生後、東京事務所では早々に緊急救援活動の実施が決まり、各スタッフが動き始めました。ダッカ事務所でもパートナー団体から寄せられるメッセージや寄付を集約したり、組織として公的に寄付を日本に送金するための手段を模索する(※)などの動きを開始しましたが、駐在員としてできることは限られており、もどかしい思いをしていました。そこに上記の知らせ。一も二もなく同行させてもらうことにしました。
(※)その後、コネを駆使して当会ダッカ事務所長の田中がバングラデシュ中央銀行総裁と会談した結果、「組織が公的にバ国から海外へ送金することは(国策として)できない」という旨の回答を得ました(クレジットカードや銀行口座を持つ個人、外資系企業の支店間送金、政府の許可を得た輸入業者等は除く)。政府の方針として、援助資金を含む外資流入による通貨高やインフレ対策よりも何よりも、自国内への外貨蓄積を優先する、ということでしょう。ブラジルなどが自国通貨高を嫌って外資の流入規制を行っているのとは対照的です。いずれにしても正攻法での送金は難しい状況です。
地震・津波の被害を受けた方々の心痛は、余りに大きすぎて想像もできません。しかし、シドルの直撃を受けて全てを喪った人たちなら、東北の被災者の方々の心情にいくばくかでも近づけるかもしれない。今日も復興に向けて歩みを進めるこの人たちの言葉なら、少しでも励みになるかもしれない。こう考えてシドル被災者の人たちからメッセージをもらうことになりました。
深夜11時にダッカを出発し、12時間かけて現地到着。到着したところで以前サウスカリユニオンの議長を務めていたマムン氏と遭遇。「どういう目的で来たの?」と訪ねる彼に趣旨を説明したところ、「私にも是非手伝わせて欲しい。村の人たちに説明して寄付を募ろうと思うから、夕方になったら市場に来て欲しい」とのこと。驚いてしまいました。
夕方市場に行くと、早速マムン氏が目立つ場所に立って話し始めました。「皆さん、先日日本で大地震があり、その後津波が襲ったため甚大な被害が出ています。2007年にシドルが私たちの村を襲った時、日本の人たちは大いに助けてくれました。今度は私たちから恩返しがしたい。皆さん2タカ、5タカでも良いですから、寄付に協力して下さい」(写真中ほどの背の高い男性)
するとそばにいた学生さんたちが「自分たちにも手伝わせて欲しい」と、ひっくり返した帽子を手に衆目に訴え始めました。
それを見ていた村の人たちからは続々と寄付が集まりました。50タカ札を出しかけて、「いや、やっぱり100タカ寄付させてもらうよ!」と言ってくれる学生さんもいました。人ごみの向こうから手を延ばして10タカ札を渡してくれるおじさんもいました。結果、4,000タカを超える寄付が集まりました。(この募金は、志ネットワークの銀行口座を通して日本に送金される予定)
集まった金額自体は微々たるものかもしれません。しかしここまでの流れは村の人たちのオーナーシップによって作られました。元々の目的はメッセージをもらうことで寄付を募るつもりはありませんでしたし、一切お願いもしていません。この村の人たちの気持ちが自然と「寄付」という形をとり、それに大勢の人たちが応えてくれた。決して楽ではない生活の中から、少額でも寄付に回してくれる。とにかく温かくて嬉しくて、胸が熱くなりました。
すぐに役立つ物資を届けることはできませんが、どうかこの国の人たちの友情と思いやりが被災地の方々に届きますように、励みとして頂けますように、そして一日も早く復興へと踏み出せますように、心からお祈り申し上げます。
明日からはこの地域の人たちから受け取った一人一人のメッセージをお伝えしたいと思います。
※市場で募金を行っている動画は以下を参照下さい。
「【東北関東大震災】バングラデシュからのエール①
」:
「【東北関東大震災】バングラデシュからのエール②」: