2020年6月17日付の現地新聞に、バングラデシュの現地NGO・YPSA(Young Power in Social Action、イプシャ)の元職員による児童への性的虐待事件に関する記事が掲載されました。YPSAは当会がバングラデシュで過去に実施した活動のパートナー団体であることから、事実確認を行いました。その結果および当会の対応について以下の通り報告いたします。
1. 事件の事実関係について
当会では2015年5月までバングラデシュ・チッタゴン市においてYPSAをパートナーとして児童労働削減事業を実施しました。その事業にも関わったことのある人物(すでにYPSAを解雇されているため、以下元職員と表記)が、2015年から少女(当時8歳)を使用人として雇っており、2019年7月にその少女(当時13歳)に性的暴行を加え逮捕されていたことがわかりました。
この少女は雇い主の妻に状況を訴えたものの聞きいれてもらえず、たまたまテレビでチャイルドヘルプラインのCMを見かけて自分で通報し、すぐに警察が家に来て元職員が逮捕されたとのことです。少女は事件直後に医学的検査、健康診断、心理カウンセリングを受けるため地元の大学病院へ搬送されたこと、現在は家族のもとで生活していることが報告されています。
この事件は現在警察による捜査が行われていますが、保釈中の元職員が、少女とその家族に対し起訴を取り下げるよう脅しているという記事が2020年6月17日の地元紙に掲載されました。この日に、YPSAの代表から直接当会のバングラデシュ事務所へ記事掲載について報告があり、当会として初めてこの事件について知るところとなりました。
昨年の事件発生後の対応について確認したところ、事件発生直後に元職員を理事会決定で停職処分とし(その翌月解雇)、その報告を過去のパートナー団体も含めた関係者にメールで通知したとのことでした。しかし当会では誰もそのメールを受け取っておらず、事件を把握していませんでした。
2. 当会の対応について
まず、被害に遭った少女や家族の安全が確保され十分なケアがなされているかどうかを確認し、可能な限り対応したいと考えています。
次に、YPSAとの関係についてです。上記の児童労働削減事業終了後、2017年にロヒンギャ難民キャンプにおける食糧配布を実施した以外は、YPSAとの直接的なパートナーシップによる事業は実施していません。一方、現在実施している家事使用人として働く少女たちに関するアドボカシー・キャンペーンにおいて、各地のコミュニティ・ラジオ局を通じた啓発番組の放送を行っており、YPSAが設立したラジオ局もその活動に参加しています。今回の事件について把握した後、事実確認を終えるまで、このラジオ局との協働を一旦停止していました。確認した経緯等を踏まえ、当該ラジオ局とのパートナーシップを一旦解消することを当会の理事会で決定しました。その主な理由は以下の通りです。
- 今回のような児童に対する虐待事件はあってはならないことであり、児童労働の削減を目指し、子どもの権利を守るための活動を行う団体として、断固とした対応が必要である。
- YPSAは昨年の元職員逮捕直後から調査委員会を立ち上げ、独自の調査を行い、元職員の処分を速やかに行っている。また先月の新聞掲載後は直ちに代表がfacebook等で事実関係について情報発信を行い、当会からの問い合わせに対しても詳細かつ適時に回答している。こうした対応をしていることは一定程度評価できる。しかし昨年の事件発生時点で当会への報告が確認できないうえに、少なくとも対応に関する相談はなかったこと、それ以上にウェブサイトや新聞広告等、公の場での情報公開がなされた形跡がないことから、YPSAの対応は十分であったとは言えない。
- ラジオ局は独立した組織ではあるものの、YPSAが運営に深く関わっている。そのラジオ局との協働により、家事使用人として働く少女の問題に関する啓発番組を放送してきたが、これまでラジオ局のスタッフからこの事件に関する言及はなく、YPSAから問題の深刻さや子どもの権利を守る意識がラジオ局の現場レベルまで十分に伝えられていなかったことは、問題である。
当会は、子どもの権利保護に取り組む団体として、以前から子どものセーフガーディングやPSEAH(Preventing Sexual Exploitation, Abuse and Harassment)のガイドライン策定の必要性を認識し、職員研修やガイドライン策定タスクフォースによる情報収集を進めてきました。しかしながら正直迅速な動きをとることができず、パートナー団体との関係を含め団体としてあるべき体制に至っていなかったことを深く反省しています。今後、上記ガイドラインの可及的速やかな策定および事業プロセスへの適用に取り組んで参ります。
2020年7月28日
事務局長 小松豊明
【本件に対するお問い合わせ先】
特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会 海外活動グループ
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