P1020111.jpg土曜日は普通なら事務所は休みなのですが、今日は1日、近くの他団体の会議室を借りて、災害対策の研修を行いました。参加したのはダッカ事務所の上級スタッフと、パートナー団体のマネジャーたち。農村部のパートナー団体、PAPRI、STEP、COLIからは代表を含む2名ずつ、都市部パートナーのオポロジェヨ・バングラデシュからは1名。今年からダッカで使用人として働く少女たちのためのプロジェクトを一緒に始めたPhulki(フルキ)からも1名参加の予定だったのですが、残念ながら体調不良で欠席。

シャプラニールも、そのパートナー団体のスタッフも、洪水などの緊急救援はこれまで何度も実施しており、それなりの経験がありますが、それでもそういった経験をシステマティックに整理して組織として蓄積し、次の災害に備えてマニュアル化することや、普段から活動の中に災害時の被害を軽減する工夫を取り入れていくことなど、まだまだできていないこと、学ばなければならないことが山のようにあります。

バングラデシュではNGOスタッフ向けの研修はいろいろ行われていて、災害対策についてもよい研修があればスタッフを参加させようと前から思っていたのですが、参加費がやけに高かったり、時間的に参加が難しかったり、プログラム内容がいまいちニーズに合わなかったりで、私が着任してからは実施できていませんでした。そこで、私たちのニーズに合ったオーダーメイドの研修を自分たちでセッティングして実施することにしたのです。

今日のリソース・パーソンは2名。災害時の情報収集・発信、リスク・アセスメント、災害時の動き方の計画づくり、モニタリングと評価など、「災害対策で最低限カバーしなければならないポイント」を概観する主要部分は、NIRAPADという災害対応NGOネットワークの若きリーダー、ポラーシュ氏にお願いしたのですが、オープニングの「災害とリスク軽減」についてのセッションを担当してもらったのは、バングラデシュの災害対策の第一人者であり、シャプラニールダッカ事務所のアドバイザーでもあるサイドゥル・ラーマン氏でした。

サイドゥル氏の鮮やかなプレゼンテーションと巧みなファシリテーションに引き込まれ、参加者、とくに農村パートナー団体のマネジャーたちは積極的に参加し、意見を交わし、実りあるセッションでした。

このセッション終了後、シャプラニールから最初に独立した農村パートナー団体、PAPRIの代表のアブ・バセッド氏が、サイドゥル氏と握手し、名刺交換しているのを見て、ある感慨に打たれました。

1997年、シャプラニールでは、バングラデシュの現地スタッフのストライキが発生し、その収拾に当時の関係者は非常に苦労しました。詳しくは、昨年3月に出版されたシャプラニールの本、『進化する国際協力NPO~アジア・市民・エンパワーメント』をお読みいただければと思いますが、このストライキのひとつのきっかけとなったのは、当時ダッカ事務所長代行をお願いしていた本日の講師、サイドゥル・ラーマン氏が現地スタッフに対して非常に厳しい人事を行ったことでした。今はPAPRIの代表となっているバセッドは、当時シャプラニールの地域活動センターのスタッフであり、ストライキ派のリーダーだったのです。

すっかり髪も髭も白くなり、でも世界レベルの防災の専門家として今も大活躍しているサイドゥルさんと、シャプラニールから99年に独立した現地NGO、PAPRIを率いて8年目になるバセッドが当時とは全然違う立場でなごやかに、そして丁重に名刺交換している…。彼らがまともに顔をあわせたのは久しぶりだったのかもしれません。私はストライキ時シャプラニールにいたわけではなく、当時のことは他のスタッフの話や本でしか知りませんが、それでも「ああ、10年たったんだなあ」と感慨を覚えたのでした。

写真=サイドゥル氏のセッション。右列後ろから2番目、シャツの袖と頭だけ見えるのがPAPRI代表のバセッド。