きのうの夜はテレビニュースも見ずにパソコンに張りついていたので今朝新聞を見るまで知らなかったのですが、昨日選挙管理内閣のフォクルウッディン・アフマッド主席顧問の国民に向けての演説がありました。2008年の終わりまでに選挙を実現するつもりであること、現選挙管理内閣は必要以上に居座るつもりはなく、究極的な目的はあくまで純粋な民主主義への移行で、自由で公正、信頼性のある選挙を通して選ばれた政権にハンドオーバーすることだと述べ、この3ヶ月間の暫定政権の成果もアピールしました。

昨日私が書いたように最近の動きをみて「大丈夫なのかこの政権は?だんだん違う方向に行きつつあるんじゃないか?」と不安を感じている人は少なくなかったと思いますが、ここでまたぐわっと文民政権の顔に戻すところが絶妙のバランス感覚(というより必死でバランスをとりながら進めている、というところでしょうか)。非常事態宣言開始から3ヶ月という節目もありますが、ベンガル新年(4月14日)前の週末、というタイミングも意図したのでしょう。

新聞に出ていた演説全文によると、2008年中に選挙は実施できる見込みで、政党の登録は選挙改革の重要項目のひとつとし、候補者の収入・支出・財産などの報告は必須とするとのこと。また、学生組織や各種業界組織などが政党に取り込まれることのないように努力し、次の選挙だけでなく、今後のすべての選挙が正しく公正に行われるための枠組みをつくることを念頭に改革を行っている、とも言っています。また、現在の行政システムでは、国会議員と行政最小単位のユニオン評議会メンバーは選挙で選ばれ、県や郡レベルのトップは中央政府からの派遣なのですが、郡レベルでも選挙を行い、地方行政をより効果的に機能させたいとしています。

電気や肥料の供給不足が乾期の灌漑稲作に悪影響を及ぼしている問題については、肥料、ディーゼル、電気を広範囲に提供すべくあらゆる方策をとっていることを説明し、電気については消費者の権利と同時に市民としての責任も持ち、各家庭でできる限りガスや電気の節約に努めて欲しい、との意識喚起もしています。

このほか、国連の汚職撤廃条約に批准したことや、国内人権委員会を設置したこともアピール。先日のSAARCサミットで2008年が「グッドガバナンスの年」に決められたことを受け、バングラデシュを南アジアの空でで光り輝くグッドガバナンスの星としたい、と高い理想を掲げています。(世界最悪の汚職の国から光り輝くグッドガバナンスの星へ、とまで言ってしまうのはすごい…。)

司法改革などを通じて市民の権利と正義が守られるようにすることや、社会の中で権利を奪われ抑圧されている人々への責任があること、女性たちが今も結婚持参金や違法なフォトワに苦しめられているという耐え難い状況は終わりにすべく、国レベルでも社会レベルでも様々な方策が必要だとも述べています。

最後は、ユヌス氏のノーベル賞受賞や穀物がほぼ自給できるようになったこと、クリケットチームのワールドカップでの健闘、縫製工場労働者の日夜の勤勉な働きぶり、バングラデシュ軍のPKFでの活躍など、国の自信につながる事項を並べ、幸せで豊かで平和なバングラデシュ実現のために国民の協力を呼びかけ、過去の失敗や限界を乗り越えることをバングラ新年前夜の誓約としたい、というまとめ。“We can do it, only if we can do”なんていう言い回しは、ユヌスさんっぽいですね。

うーん、このスピーチの内容が本当にすべて実現したらどれだけ素晴らしいことか。結婚持参金や違法なフォトワをなくす取り組み、というのはぜひ実現してもらいたいしこういった分野でNGOと地方行政の協働を促進することも積極的にプッシュしてもらいたいものです。

言うは易し、行なうは難し、でありますが、この演説内容の具体性と前向きさについては評価したいと思います。今後の動きを注意深く見守りましょう。