今回は、少女たちの尊厳や権利を守る活動、困難に立ち向かい希望を持って生き抜く少女たちの現状、そして今社会で必要とされている支援とは何かなどについて伺いしました。
虐待や性暴力被害を受けた10代の少女を支える活動を行う一般社団法人Colabo(コラボ)代表。夜の街でのアウトリーチ活動、シェルターでの保護や宿泊支援、住まいの提供などをしながら、10代の少女たちとともに虐待や性搾取の実態を伝える活動や提言を行っている。第30期東京都「青少年問題協議会」委員や厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員も務め、2019年には「Forbes Under 30 Asia 2019 社会起業家部門」を受賞。
キャンペーンTOP»「子ども支援を行う活動家に聞きました」仁藤夢乃さんインタビュー CHAPTER.1 社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.1】社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.2】『子どもの権利』を守るためのアクション
【CHAPTER.3】子どもが自分らしく生きられるように
CHAPTER.1 社会問題の解決に向けて
コロナ禍で少女からのSOSが急増―日本でも起きている社会のリアル
一般社団法人Colabo(コラボ:以下、Colabo)では、虐待や性暴力被害にあった10代の少女の支援をしています。新宿と渋谷でバス型の無料カフェを開き、夜の街でのアウトリーチ活動(声かけ)をしながら、一時保護シェルターやシェアハウスでの住まい提供、政策提言もしています。この活動を通して出会う少女の多くは、さまざまな理由から安心して家で過ごすことができていません。去年団体へ寄せられた相談は590件ほどでしたが、2020年は3月の学校休校要請から半年足らずで800件に急増しています。相談の多くは、親と一緒にいる時間が多くなり虐待を受けている、性暴力被害に遭った、風俗店で働かせられたなどです
こうした社会での変化の中で生活に困窮している少女が増えていることにいち早く気づき、援助者のふりをして声をかける人の多くは、JKビジネス(注1)における性搾取を目的とした買春者か、危険な仕事を斡旋する業者です。追い詰められている少女たちは、そばに頼れる人や理解してくれる人がいないと思っているので、声をかけてきた人の中からよりましな人を選ぼうと彼女たちなりに考えても、彼女たちと出会おうとしているのが搾取を目的とした大人ばかりであるため、結果危険な目に遭ってしまう。こうした問題は途上国だけではなく日本社会にもあるんですよね。
(注1)特に都市部において、女子高生を商品化し、性を売り物とする営業。裏オプションと称してわいせつな行為が行われるなどとし、若い女性が性的被害を受けるなど、福祉犯罪の温床となっている。
大人の無理解と無関心が少女たちを追い詰める
Colaboで出会う少女たちは、過去に学校や児童相談所などにSOSを出したけど、大人に適切な対応をしてもらえなかったという経験をした子が多いです。そのことにより大人に対する不信感を抱き、自分でなんとかしようとした結果、SNSで人に頼ろうとし、「仕事も寮もあるよ」などとあの手この手で近寄ってきた人から性搾取の被害に遭ったりすることも多いんです。
緊急事態宣言下では、収入がなくネットカフェも利用できなくなり、本当に行き場が無くなった少女たちと路上で出会うケースが増えました。身分証も保険証もないまま、東京に出てきて被害に遭う少女、居酒屋や風俗などで日雇いで働かされながら安全とは言えない場所に数年暮らしてきた少女など。これまでよりも生活に困窮して追い詰められる少女たちが増えていると思うと良い状況とは言えません。この子たちが「助けて」と言い出せない社会の仕組みになってしまっているんですよね。
無料バスカフェが心休まる場所へ、夜の街に紛れる少女たち
2018年10月から月3回程度、韓国の取り組みを参考にバス型の無料カフェを拠点にして、新宿・渋谷の夜の街でアウトリーチ活動(声かけ)をしています。この活動は街をさまよう経験をし、現在Colaboのシェアハウス(中長期シェルター)で暮らす子たちが「無料のカフェがあるから来てみない?」という感じで路上にいる10代の子への声かけを担ってくれています。大人が声をかけると警戒されてしまうのですが、同年代のメンバーが声をかけると、気軽に立ち寄ってくれて顔の見える関係性がつくれるようになったんです。
こうした夜の街で、家に帰れない、性搾取に遭うリスクの高い少女たちへのアウトリーチ活動を強化したことで、バスカフェでは開始から約2年で1,300人に出会うことができました。それから、このような少女たちに出会うことの必要性を社会に訴えてきたことで、東京都と厚生労働省のモデル事業にもなりました。でも少女たちの受け入れ先がなかなか無いんですよ。児童養護施設や自立支援ホームには数の限りがあり、入居まで半年待ちだったりする他、里親も10代後半の少女を受け入れてくれることがとても少ないんです。そのためColaboでは必要に迫られて、中長期的に利用できるシェルターをシェアハウスとして運営しています。
シェルターが少女たちの安心できる居場所に
少女たちは、これまで誰かに頼ろうなんて思いつかないし、自分が頼っていいなんて思いもしなかったと言うんですよね。そういう少女たちがColaboに来ると、炊きたてのお米のにおいに感動したり、キャリーケースで転々と移動しなくていいことに安心したりする姿をみせてくれます。
このシェアハウスではそれぞれが自分の部屋を持ち、共同生活をしています。Colaboでは基本的に大人が何かする側で、少女たちがされる側でという関係ではなくて、一緒に社会を変えていく仲間だと思っています。高校卒業認定を取るために勉強しながら働くなど、それぞれが目標に向かって生活しています。その他に、シェアハウスに住むメンバーや、そこから自立したメンバーがそれぞれやりたい活動をするサポートグループTsubomiという取り組みがあります。例えば、今も全国を巡回している「私たちは『買われた』展」は、慰安婦問題の展示会に行った子が被害女性の経験と自分経験の重なりを感じ、児童買春の実態を伝えたいと提案したことから始まりました。その他にも、シェルターの増設準備やバスカフェの運営、日々の事務作業や寄付物品の管理などもColaboメンバーの一人として、それぞれができることに参加してくれています
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キャンペーンTOP»「子ども支援を行う活動家に聞きました」仁藤夢乃さんインタビュー CHAPTER.1 社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.1】社会問題の解決に向けて
【CHAPTER.2】『子どもの権利』を守るためのアクション
【CHAPTER.3】子どもが自分らしく生きられるように