前回も書きましたが、物価の激しい上昇でBDRマーケット(準軍組織のBangladesh Riflesが運営する政府の“フェア・プライス”マーケット)に並ぶ人の列は日に日に長くなっています。昨日はダッカ事務所のドライバーのシポンもこう言っていました。「恥じることじゃないと思うから言いますけどね、アパ。うちの妻も今はBDRマーケットに延々と並んでキロ25タカの米を買ってますよ。僕が家で食べてるのもその米ですよ」

また、農村でもちょっとした異変が起こっています。都市の物乞いはコインをもらうのが普通ですが、農村の物乞いには人々はひとつかみの米をあげるのが普通だとのこと。それが近頃、米でなくコインをあげる人が増えているというのです。米の値段が上がり、米ひとつかみより1タカコインのほうが安くなるからだとか。米ひとつかみは何グラムか、自分の手で測ってみたところ、40グラム強でした。1キロ35タカの米なら40グラムで1.4タカ、キロ25タカならちょうど1タカです。村人たちの計算はなんと正確なのでしょう。

昨年相次いだ洪水、サイクロンという大災害の影響で米の収穫が落ち込んだ上、米の主な輸入先であるお隣のインドはバングラデシュの足元を見てかノン・バスマティ米(インドで高級米とされるバスマティ以外の米)の最低輸出価格を1トン650ドルから1000ドルに上げてきました。一般の輸入卸商人はこれではインドからの米輸入は実質考えられなくなった、というひどい高値です。もっとも交渉の結果、政府に直接売る場合の最低価格は1トン430ドル、ということになったので、それほど問題ない、とバングラデシュの農業省の役人は言っていますが...。

乾期の間に地下水をポンプでくみ上げる灌漑稲作で栽培され、今各地の田んぼで青々と育っているボロとよばれる米が収穫され、市場に出回るのは4月中旬の見込みです。国産の米が出回るその時になれば米の値段も下がるだろう、と言われていますが、もしそれでも下がらなかったら...そのときはいよいよ人々の怒りが噴出するかもしれません。

それを読んでかどうだかよくわかりませんが、バングラデシュ二大政党のひとつアワミ連盟は、拘禁されている党首シェイク・ハシナの解放要求と物価高騰への抗議のため、4月中旬に大規模なハンガー・ストライキを呼びかける予定とのこと。

4月中旬はベンガル暦の新年が始まる時期。果たしてこのベンガル正月、お米クライシスを脱して喜びの時となるか、それとも怒りの時となるか。