日本でもテレビニュースなどで報道されたようですが、おととい11日、汚職事件で拘留されていた前与党BNPの党首カレダ・ジア前首相が仮釈放されました。昨年9月に逮捕されてから1年ぶり。自由の身になったジア前首相は党事務所のバルコニーから支持者の声援に応え、夫の故ジアウル・ラーマン元大統領の墓に詣で、入院中の長男でBNP幹事長のタリク・ラーマンを見舞い、母と息子の病室での再会や涙するジア前首相の様子が報道されました。母との再会を果たした息子タリクは治療のためロンドンへ行き、当分政治からは遠ざかるとのこと。
カレダ・ジア前首相の長年のライバル、アワミ連盟の党首シェイク・ハシナ元首相も、病気治療のためひと足先に6月に仮釈放され、今はアメリカに滞在中です。近いうちに帰ってくるという話。
今朝の新聞によれば、ジア前首相は「党内から悪い要素を廃し、シェイク・ハシナ元首相と共に公正な選挙に向けた話し合いのテーブルに着く」ことに同意した、とのこと。
非常事態宣言下、軍をバックにした暫定政権がバングラデシュを支配していたこの18ヶ月間、二大政党の2人の女性党首を国外に追い出そうとする動きや、グラミン銀行のユヌスさんが新党をつくろうとした動きなどいろいろあったけど、結局のところ、新たなリーダーも現れなかったし、二大政党なしには選挙も成立しないということで元の状態に戻ったような感じ。
汚職一掃を掲げていたこの暫定政権の期間中、いったい何が変わったんだろう?と思います。大物政治家はどんどん逮捕されたけど、結局一番の大物たちは出てきたし、巷の役所などの汚職はちょっとよくなっていたのは最初だけ。そのうち前よりもっと酷くなって元の木阿弥でした。そして公正な裁きもないまま逮捕された人は数万人に及び、治安部隊に命を奪われた人は少なくとも279人、と人権団体が発表しています。物価上昇は甚だしく、とくに食品の物価上昇率は12%以上。昨年から今年にかけてあらたに40万人が貧困線以下に落ちたと言われます。物価高騰は暫定政権のせいだけではなく、世界的な動きではあるけれど。
よかったことといえば何があるんだろう?思い出せるのはサイクロンSIDRの来襲時に軍がよく動いたこと、昨年の冬季灌漑米のシーズンの稲作促進策がそこそこ効果を現したことぐらいか…。ああ、そうか、選挙人名簿とIDカードの作成、というのがあった。これが現政権のやった仕事としては一番大きいですかね。これが出来る前は人によっては2つも3つもダブって投票権持ってたりして滅茶苦茶でしたもんね。
当地の新聞などもこの二大政党両党主仮釈放の動きを歓迎しています。これでやっと選挙ができる、と。結局暫定政権がやったことは最悪の事態を回避して約2年間、時間稼ぎをしたに過ぎなかったのか。これでテープを巻き戻すみたいに、2年前の状況に戻るのかな。
選挙後もあまり変化は期待できないけど、国民に選ばれたのでもない暫定政権が国を治め続けるのはもう限界が来ていると皆が感じています。とにかく平和裏に選挙を実現してもらいたい。そして選ばれた政党は痛い目にあったことを薬としてこれまでより賢い政治をしてもらいたいものです。
選挙実施予定の12月に向け、今後バングラデシュはどうなっていくのでしょう。あんまりぐちゃぐちゃになりませんように。