いよいよ7年ぶりのバングラデシュ総選挙当日。今日は晴れて日差しも暖かく、よい投票日和になりました。投票時間は今朝8時から午後4時まで。今回の選挙の有権者の数は全国で約8100万人、うち男性が約3982万人、女性が約4124万人。全国約35,000ヶ所の会場には現地NGOスタッフなど約20万人が選挙監視員として配置され、海外からの選挙監視団員も約500名が参加。シャプラニールの大橋正明前代表理事も日本政府の選挙監視団の一員としておとといの夜到着。今日は早朝からガジプールの選挙会場の方に行かれているはずです。

選挙監視のお仕事には関わっていない私。朝からのんびりとテレビで選挙中継を見ていましたが、どの投票会場でも整然と平穏に投票が行われている様子。選挙管理内閣のフォクルウッディン・アフマッド主席顧問もダッカで投票し、「これでバングラデシュは前進すると思う」と取材陣にニコニコ答えていました。もうすぐやっと重い肩の荷が下りる、という安堵感が顔に出てましたね。

私も昼過ぎから近くの選挙会場にのこのこ出かけていきました。

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こちらはダッカ13区の会場のひとつ、ラルマティア女子カレッジ。私の自宅から歩いて5分ぐらいです。門は閉じたまま、投票する人は守衛さんが立っている狭い通用口から中に入ります。

守衛さんに「投票者じゃないけど中が見たいんですけどー」と言ったら、「あそこにいる警察のオフィサーと話をしてください」と言われ、緑の制服とベレー坊でライフルを持った警官に「タダのガイジンなんですけど、どんな風に選挙が行われているか見たいんですがー」と相談。警察官氏は穏やかな人で、「アナタは選挙管理委員会の許可がないから写真は撮られると困るけど、見るだけならいいですよ」と中に入れてくれ、しかもずっと付き添いながら解説してくれました。

私が見せてもらったのは女性の投票会場になっている教室(投票会場は男女別です)。教室の中には選挙管理委員が教壇の机に2人座っていて、そこで投票する人は投票者IDカードと整理券を見せます。選挙管理委員の手元には写真入りの投票者リストがあって、それで投票者の顔写真、氏名、住所を確認し、投票用紙と選挙管理委員会のハンコを投票者に渡します。私が行ったときは、10人ぐらいの女性が並んでいました。(今日は結局投票所への携帯電話持込を禁止するかわりに携帯のネットワークそのものは閉鎖されないことになったのだけど、教室に入ってもまだ携帯で喋っている女の子が1人いて、誰も注意してませんでした。そのへんけっこうテキトー)

この投票用紙はペローッと縦長のもので、そこに四角い枠の中に入った各政党のシンボルマークが縦に並んでおり、それぞれのシンボルマークの横にハンコを押す欄があります。投票する人はこの紙とハンコを持って教室の窓側の衝立の中に行き、そこで投票したい政党のシンボルの横にハンコを押して、その用紙を透明な投票箱に入れ、ハンコを返す、というシステム。字を読んだり書いたりする必要はありません。

会場となっている教室の、入ってすぐ左側の壁際には選挙管理委員とは別に何やらリストを持って机に並んで座っている女性たちが3人ほどいました。

私「あの人たちは誰です?」

警察官氏「あの人たちは各政党のボランティアです。手元にあるのは投票者のリスト。顔写真はないけど、氏名と住所が書いてあります」

私「はあ、じゃ投票した人は帰りにあのデスクにも寄って名前を言うんですか?」

警察官氏「いや、選挙管理委員のデスクで投票者の名前とか住所を照らし合わせて読み上げるでしょ。それを聞きながらチェックしてるんです」

なるほど、各政党からも不正がないか監視するために会場内に座ることが許されているわけね。

私「投票に来る人は女性と男性どちらが多いですか」

警察官氏「んー、バングラデシュの投票者人口は女性のほうがちょっと多いですからね。ここもそんな感じですよ」

私が見たところ、けっこう若い女性が多いな、と思いました。今回の選挙は7年ぶりということもあって、初めて投票する人が多いのがひとつの特徴です。今朝の新聞によると選挙人口の32%が今回初めて選挙権を持った人だそう。うちの事務所に先月から入った若いプログラム・アシスタントのサビハも選挙は今回が初めてで、昨日帰り際に年上の同僚たちから選挙会場での投票の仕方を教わっていました。サビハみたいな若者が今日はたくさん投票に行ったはずです。

案内をしてくれた警察官氏に礼を言って外に出ると、投票会場の前には胸に政党のステッカーを貼った人たち(主に若者)が何人か立っています。

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胸にノウカ(小舟=アワミ連盟のシンボル)のステッカーを貼った若者たちに聞いてみました。

私「あなたたち、何の仕事をしてるんですか?」

若者たち「僕たちは政党のエージェントです。これから投票する人にボランティアとして、選挙のやり方などを教えてあげるんです」

私「ふーん。あなたたちはアワミ連盟のエージェントってわけなのね。あ、で、あっちに立ってる人はBNPのエージェントなんだ」

若者たち「はい、そうです。各政党から全部来てますよ」

私「どう、今回の選挙は?今まで見たところどんな感じ?」

若者たち「すごくスムースにうまく行ってると思います。今のところなんの問題も起きてないし」

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こちらはBNPのエージェントたちが座ってるテーブル。投票会場の外の路上に、こういうテーブルがいくつか見られます。ここにもボランティアの若者たちが。写真では小さくてよくわからないと思いますが、左手に座っている女の子にモテそうな茶色いジャケットの若者は襟元に金色の稲穂のブローチをつけていました。けっこうこれがコジャレてて「へーこんな小物もあるのか」って感じ。

私「あななたちは何をしてるんですか?」

若者たち「僕たちは政党からのボランティアです。ここで整理券を配るんです。投票する人はこれに名前と投票者IDカードの番号と住所なんかを書いてIDカードを見せるときに一緒に出すんです。ここはBNPのブースだけど、他の政党もみんなブースを出してて、投票者はどこで整理券をもらってもいいんです」

そこで配られていた整理券はこれ。投票会場を書く欄もあります。これはBNPのブースで配られていた整理券だから左側にBNP候補者や党首の顔やシンボルの稲穂が印刷され、「稲穂マークに投票しよう」と書かれてますね。

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んー、確かに投票会場の中で見たとき、みんなこの整理券を持っていたけど、左側の宣伝部分はもぎってあったな。どこで左側をもぎってたんだろ?投票する人はどの政党のブースに行って整理券をもらってもいいわけだけど、たいてい自分が投票したい政党のところに行くだろうから、それで各政党が整理券の左側のもぎった部分の数を数えて、自分の党に投票した人のだいたいの数を把握する、というシステムなのかな。たぶん投票会場の入り口でこれにスタンプで通し番号を押してもらい、左側をもぎったのを持って中に入る、というふうになってたんでしょうね。

投票会場から家に歩いて戻ってきたら、近所の立ち飲み茶屋兼雑貨屋の兄ちゃんが「アパー、投票した?」と聞いてきました。「私はガイジンでここの選挙権はないから投票しないよ、見てきただけ。あなたはどこの党に投票したの?」と私も聞いてみましたが、店の前で茶を飲んでいた人たちの顔をちらちら見ながら当惑した笑顔で答えてくれず。「人前じゃ言えないか(笑)。秘密?」と聞いたら「はい...秘密です」ということでした。

開票は夕方から始まります。正式な結果が出るのは明日になるでしょうが、今日の夜中にはだいたいわかるはず。各テレビ局も今夜は特別番組を組んでいます。私もワインとチーズなどちびちびやりながら開票結果を見るつもり。