わたしがシャプラニールに入職したのは、2020年4月。その直後の「緊急事態宣言」。そして「在宅勤務」。なんと、活動地であるバングラデシュやネパールに足を運ぶどころか、西早稲田の事務所にさえ行くことができないままに、職員としての歩みをはじめた。
わたしの担当する「ステナイ生活」は、全国各地の支援者、そして多くのボランティアによって支えられている活動だ。この「ボランティア」という存在が、シャプラニールにとってはかけがえのない存在であり、強力な力添えをしてくれる存在なのである。COVID-19が広まる以前、シャプラニールの事務所は多くのボランティアの声が響いていた。わいわいとボランティアスペースのテーブルを囲み、ステナイ生活に届いた寄付物品の開封・仕分け作業。15時になると、スタッフも一緒にお茶を飲みながら一段落。そしてまたわいわいと作業。
…と、あくまでもこれは他の職員から漏れ聞こえてきた話をもとにした、私の想像である。
わたしが入職した時、ボランティアスペースのテーブルを囲むのは、ボランティアの方々の顔ではなく、開封の目星のつかない寄付物品の山だった。シャプラニールでは、スタッフが在宅勤務になるのと同時に、ボランティアの受け入れも停止せざるを得なかった。それでも、ありがたいことに数百件の封筒が事務所には毎週届いていた。しかし、せっかく送ってくださった方にもお礼状が送れない。開封ができなければ換金ができない。換金できなければ現地での活動にも影響が出てしまう。現地で支援を必要とする人に、その思いを届けることができない。その時は本当に「えらいことになった」と思った。
事務所が閉まっている間、スタッフが自宅に物品を持ち帰り、開封作業をおこなった。しかしなかなか進まない。6月末になって、ようやく事務所が再開することができ、ボランティアの受け入れ・活動も再開した。人数・時間に制限を設けたものだったが、本当に多くの方がまた事務所に足を運んでくれた。私はその時になってようやく、シャプラニールに集うボランティアの偉大さが身に染みた。今まで遅々として進まなかった開封作業がどんどん進み、「事務所の時間だけじゃ足りないから」と家に持ち帰って作業をしてくださる方もいた。また、切手の仕分けや台紙への貼り付けなど、今まで手が回せていなかった部分は、「在宅ボランティア」の方々が自宅で作業をしていただいた。家族で一緒に作業してくださる方もいる。
うず高くそびえたっていた寄付物品だったが、ボランティア再開から3か月ほどで、すべて開封・仕分けをおこなうことができた。いかにシャプラニールの活動が、ボランティアの力によって支えられていたか。本当に実感した1年間だった。ステナイ生活に至っては、もはやボランティアの力がなければ活動自体が成立しない。
あるボランティアに言われた言葉。「外出できないからって家でずっとおとなしくしてるより、少しでも誰かの役に立てる方がわたしも嬉しいから。」
スタッフ、会員、そしてマンスリーサポーターだけではない。ボランティアという大きな存在があってこその「市民による海外協力の会」なのだ。
髙階悠輔(たかしな・ゆうすけ)
国内活動グループ
秋田県出身。学生時代に国際協力や開発教育を学び、NGOのユースとしても活動。青少年団体での勤務を経て、2020年4月に入職。
<この記事はマンスリーサポーターキャンペーン2020に際して執筆したものです。>