新しい1年が始まりました。
みなさんはどのような朝を迎えられたでしょうか。
私は例年と同じように自宅近くの公園で妻と一緒に初日の出を拝み(というかカメラに収め)、近所の友人たちとあいさつを交わし、家に帰ってお雑煮をつくり家族と一緒におせち料理をいただきました。そんな当たり前の、いつも通りの元旦を迎えながら、今年は特にその「当たり前」のありがたさ、貴重さをかみしめています。
終わりの見えない戦争によって多くの命が失われ、今この時も膨大な数の人たちの命が危機にさらされています。人々の暮らしに影響を及ぼし続ける感染症拡大により、お正月に家族に会いに行くことさえままならない人もいます。突然の政変により人権が奪われてしまった多くの人たちがその後どうなっているのか、現状を知ることさえ難しくなっています。世界のどこかで起きたことが、世界中に拡散し遠く離れた私たちの生活にも多大な影響を及ぼし得ることを、私たちはこの数年をかけて否応なしに体験し学んできました。少し前まで私たちが想像もしなかった今の社会状況を目の当たりにして、私たちは何を想えばよいのでしょうか。
今朝の朝日新聞にノーベル文学賞作家スベトラーナ・アレクシェービッチ氏のインタビューが掲載されています。彼女はウクライナの戦争において「人間から獣がはい出している」と言います。そして世界中いたるところで憎しみという狂気があふれ伝染するようになった、と。日本ではいつの間にか、まともな議論もされないままここぞとばかりに防衛費の倍増が決定し、戦争ができる国づくりへ向けた「安保3文書」が閣議決定されてしまいました。近隣諸国との緊張関係を助長するだけとしか思えないこうした暴挙に反対する市民の声は、この国にも伝染した「狂気」にかき消されています。
アレクシェービッチ氏は、近しい人を失くした人、絶望の淵に立っている人のよりどころになるのは、孫の頭をなでることや朝の一杯のコーヒーといった、日常そのものだけなのだと語っています。私たちは、その当たり前の日常を守り、人間性を失わないための営みを一つひとつ積み重ねていかなければならないのだと、この新しい日に考えています。
事務局長 小松豊明