フィリップ・ガイン(SEHD

The Story of Tea Workers* Philip Gain

(Society for Environment and Humane Development )

 紅茶生産の栽培、加工、取引、消費の一連のプロセスの中で、生産者に対する注意が払われることは非常に少ない。紅茶生産は農業と工業の両方によって成り立つという意味で、それ以外の産業とは大きく異なり、労働力の大部分は農業セクターに集中している。また紅茶園の労働者のほとんどは外から来ている。イギリス企業によってビハール、マドラス(現在のチェンナイ)、オリッサ、アンドラ・プラデシュ、マデヤ・プラデシュ、西ベンガル、ウッタル・プラデシュなどインド各地からシレットに連れてこられた人々なのである。

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<紅茶園では多様な人が生活する。宗教も多様> 

この人たちの不幸は、紅茶園に向かう旅から始まっている。実に3分の1が、紅茶園への移動もしくは過酷な労働及び生活環境の中で命を落としたといわれる。そして、紅茶園に到着した時からこの人たちはクーリー(苦力:単純労働者)として、紅茶園の所有物のような扱いを受けるようになった。

 異なる民族からなるクーリーたちは、森林を切り拓き茶の苗を育て、日陰を作るための木を側に植え、紅茶園所有者たちのための瀟洒なバンガローの建設を担った。しかし彼らは、自分の手で建てた粗末な小屋(Labor

Line:労働者の居住区。インドでは、通り沿いに労働者の家が一列にならんでいたところを“Line”と呼んでいたので、おそらく同様の状況であると考えられる)にその後もずっと住み続けることになる。

P1090919.JPG <農薬もしくは殺虫剤を散布する仕事の男性。昼食時、自宅に戻るところ>

 当初紅茶園での労働契約は4年だった。しかし、最初の労働者たちが紅茶園で生活を始めてから、既に4世代以上の時が過ぎている。

 そのときから状況は少しも良くなっていない。この人たちには何かを「選択」することも、土地や家屋を所有する権利も持ちあわせていない。あるのはほんのわずかばかりの賃金と最低限の生活保証。労働者一人に対して家が貸与される。

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<複数世帯が共同で井戸を使用>  

この家は雇い主が責任をもってメンテナンスをするという建前になっているが、通常は住人である紅茶園労働者が行う。一般に労働者の住環境はけっして良いものではなく、多くの場合は劣悪といえる。小さな部屋に家族全員が身を押し込むようにして暮らしている。時には同じ部屋に家畜と人がいることもある。茶園の管理者に許可をとって家か部屋を増築しようとする世帯もある。

 (続く)

注:写真はすべて2011年8月インド西ベンガル州の紅茶園にて撮影したもので、本文(バングラデシュの紅茶園)とは関係ありません。