紅茶園で働く人々は、バングラデシュの中でも最も脆弱なグループの一つである。政府による平等な扱い以上の、特別な配慮が必要である。しかし残念なことながらこの人たちは社会から排除され、低い賃金で働き、ほとんどが非識字者であり、搾取され、分断されている。またほとんどの人々は母語や母文化、歴史、教育、知識そして連帯を失っている。
考えなくてはいけないのは、いつまでこの人たちが紅茶園の居住区に押し込め続けられるのかということだ。何かを選択することも許されず、4世代に亘って耕し続けた土地すら得ることもなく生き続けるのか。
雇用側はおそらく、廉価で安定した労働力に彼らを押しとどめるて現状維持を願っている。しかし労働者たちも以前に比べて置かれた状況を自覚し、正義を求め始めた。教育、十分な栄養と健康、食料、水や保健衛生の分野において、国やNGOのからの支援を期待している。また固有の言語、文化の保全と、彼らの存在が社会的に認知されることを希求している。
紅茶園の外に広がる未知の土地にはどんな将来が待っているのか分からないという恐れから、紅茶園の人々は声を上げることもなく、過酷な状況にとどまっている。バングラデシュの一市民として、本来はどこに住むのも自由である。しかし現実には新しい一歩を踏み出そうとする人は少ない。
見えない鎖が彼らを紅茶園にしばりつけている。社会的、経済的排除、所有権剥奪、そして経営者、周囲のベンガル人コミュニティからの扱いが、人々を囚われの身とさせている。
政府はデジタルバングラデシュという明るい未来を人々に見せ、貧困層や社会的弱者、先住民たちも含めた生活の向上をうたっている。紅茶園労働者は単に貧しいだけでなく、従属的な状況に縛りつけられ虐げられたコミュニティなのである。
社会の大半を占める人々と平等の立場になることはほとんど難しいし、紅茶園以外の職を得るのもきわめて難しい。紅茶園の労働者たちは、国がこの問題を取り上げ、政治的そして人道的保護の実行を待ち望んでいる。
(終り)
出典:フィリップ・ガイン(SEHD)
The Story of Tea Workers* Philip Gain (Society for Environment and Humane Development )注:写真はすべて2011年8月インド西ベンガル州の紅茶園にて撮影したもので、本文(バングラデシュの紅茶園)とは関係ありません。