明日からまた道路封鎖再開。2大政党とその連合勢力がそれぞれ相手を蹴落とそうといがみ合い、「健全な選挙を」という掛け声も虚しく、なかなか国の明るい未来が見えてきません。新聞を読んでいてもロクなニュースがなくうんざり。(それは日本でも同じかもしれませんが…)
道路封鎖だの、抗議集会だの、路上で女性が酸をかけられただの、交通事故だの、という記事で埋もれた2日前の新聞の中ほどに、見開き全面まるまる使った大きな広告が出ました。鮮やかなセロリアン・ブルーの、無限大マークをつなげたようにも、プロペラのようにも見える新しいロゴに、”It’s time to move forward”(今は前進の時)のコピー。グラミン・グループ傘下の携帯電話会社、グラミン・フォーンの広告です。
私が購読しているような英字紙を読む人はバングラデシュの中でも知識層。自国の混沌とした政治状況にうんざりしながら新聞を開く人の心をつかむ、うまい広告だな、と思いました。この広告、きのうも今日も少しずつ趣向を変えた全面広告が出ており、町中の通話カードを扱う店先にもこの新しいロゴを刷り込んだグラミン・フォーンのバナーが目立ち始めました。
写真の広告は今朝の新聞に出ていたもの。広告の後ろに、「バングラデシュ国民諸君よ、明るい気持ちで、希望をもって前に進もう」というユヌス氏の顔が見えてくるようです。
携帯電話ではグラミン・フォーンに次ぐ大手のバングラ・リンクも負けていません。こちらはテレビ・コマーシャルで前向きな変化のイメージを演出しています。このところずっと放映していたのは、「成功した漁師編」。ストーリーは以下のようなものです。
<日がな一日魚をとっては安い値で買い叩かれ、いつも暗い顔をしてため息をついている漁師の父。少年だった息子は父の明るい笑顔を見たことがなかった。父と二人、網を手に、とぼとぼと夜道を帰る少年…。(ここまでモノクロ映像)
一転して明るいカラー映像。燦燦と降り注ぐ陽射しの中、精悍な漁師の若者が携帯を手に船の上で「オーケー、今いくよ」と話している。小船の上には大きな魚が満載。岸に着くと地元の商人が安値で買い叩こうとやってくるが、若者はそれに目もくれない。そこへ先ほど電話で話をつけた取引先が氷を積んだトラックでやってきて、魚を買い取っていく。川岸を「父さーん」と駆け寄ってくる小さな息子を抱き上げ、笑顔の青年。その手にはバングラ・リンクの携帯電話。>
現実はなかなかこう上手くはいかないでしょうが、父の世代と今は違う、これからよくなっていくんだ、というイメージを強く打ち出した印象的なCMです。数日前から、携帯で連絡を受けた女性ジャーナリストが現場に駆けつけて写真を撮る「女性カメラマン編」も放映されていて、こちらもなかなか新しい感じ。
テレビ・コマーシャルは時代を映すもの。バングラデシュのテレビCMにははっとするような垢抜けたものはまだあまりないけれど、その中でも最先端を行く携帯電話会社のCMには、こうあってほしい、という今のバングラデシュを生きる人々の夢が託されているような気がします。
グラミン・フォーンのあの新しいロゴやコピー、誰が作ったのかな。もしバングラデシュの広告代理店の仕事だったらなかなかのものだと思うけど。ホームページも一新されてました。見てみてください。→www.grameenphone.com