総選挙を控えて、毎日のように各政党の政治集会が開かれ、垂れ幕を持っての行進や、人寄せのために演説の合間に歌や踊りを交えたようなプログラムもあちこちで行われています。

その中で気にかかるのは顔や身体にペイントして行進の先頭を歩かされたり、集会で踊らされたり、おとなに交じって石を投げたりしている子どもたちのこと。あまりにも日常的に子どもが政治に利用されている現実に腹が立ちます。こういったことに巻き込まれたために逮捕されている子どもも相当いるに違いないのです。

私たちが現地NGOのオポロジェヨ・バングラデシュと共同運営しているストリートチルドレンのための青空学校やドロップインセンターのあるサイダバッド、ジャットラバリ地域は政治集会などが盛んに行われる、選挙前には荒れがちな地域です。ドロップインセンターの子どもたちには、こういった政治集会には近づかないようにとスタッフが日頃から注意していますが、テレビでこの地域の政党支持者集会の映像が映り、子どもが動員されていたりすると、その中に知っている子の顔がありはしないかとハラハラしてしまいます。

昨日、バングラデシュの子どもの権利に関わる分野で活動するNGO235団体が加盟するシシュー・オディカール・フォーラム(シシューは子ども、オディカールは権利の意)は、各政党に向け、子どもを政治に利用しないように、との声明を出しました(ちなみにこのフォーラムのチェア・パーソンはオポロジェヨ・バングラデシュのプログラム・ディレクターのワヒダ・バヌ氏)。

同じようなメッセージはほかの子ども関係ネットワークや女性弁護士協会なども出しているのですが、そういった声を伝える新聞記事はとても小さく、なかなかメッセージが伝わっているとは思えません。

主だった新聞に一斉に「子どもを政治に使わないで!」という一面広告を出したらいくらかかるんだろう?などと考えてしまいます。NGOが共同で出すことはできないかな。

最近、援助国の大使などが、「平和的な選挙を」と政党のリーダーとの会談で要望する場面を見るけれど、そこでひと言、「子どもが政治の道具になっていることに懸念を感じる」と言っていただいてはどうでしょう。

もうひとつ気になることは、テレビが政治家や選挙管理委員などの事務所でインタビューする際、インタビューを受けている人物の机の上にある家族や子どもの写真などをアップで長々と写すこと。家族や子どもは関係ないじゃないか。プライバシーの侵害だと思うのですが、これも日常的によく目にします。

政党のリーダーやメディア関係者を対象にした子どもの権利研修が必要だ、と思います。(もちろん、子どもの権利のことに敏感で、素晴らしい記事を書いたり取材をしているジャーナリストの方もいるのですが、テレビ画面を見た限りではそうでない人も多い気がします。)

そういう仕事はシシュー・オディカール・フォーラムとかUNICEFのようなところがやるべきなんじゃないかと思うけど、もう何かやっているのかしら。

結局、子どもたちの状況をよくするためには「今困難な状況にある子ども」の救済も大事だけれど、「子どもを困難な状況に陥れているおとなや社会」を変えないとどうにもなりません。バングラデシュは日本より早く1990年に子どもの権利条約に批准しているのですが、政治家たちはこの条約の内容を果たして知っているのかどうか。

シャプラニールの子ども支援活動では、「ストリートチルドレンの周囲にいる地域のおとな」や「使用人として子どもを雇用しているおとな」への働きかけに重点を置いていますが、今後もさらに「おとなを変える」ことを意識した活動を増やしていくべきなんだろうな、と思います。