昨日の夜、自宅に帰ってテレビをつけたら、ちょうどオスロでノーベル平和賞を受賞したユヌス教授の演説が生中継されているところでした。「貧困解決が平和への近道」「ソーシャルビジネスが未来を開く」と訴えたユヌス教授のスピーチは日本の新聞にも載ったかと思うのでここでは紹介しませんが、長い演説を終えてユヌス氏が席に戻った直後、満面の笑みをたたえて登場したベンガル舞踊団を見て、私の胸は期待と不安に震えました。
不安、というのはバングラデシュのテレビではよく、呆れるほど動きが揃っていないベンガル舞踊を見せられているので、ここでもそれをやってくれちゃったりして…という不安。期待のほうは、黒っぽいスーツ姿がめだつ取り澄ました会場の参加者たちを、バングラデシュ・パワーであっといわせてやってよね!という期待。
「アマル・ジョンモ・ブミ(私の生まれ故郷)」の音楽にあわせて始まった踊りは、さすがにある程度上手な人を選んできたみたいで、動きの揃い具合はまずまず。カラフルな衣装の袖からむっちりした二の腕を出して田植えのしぐさで踊るお姉さんたちや、魚とりの竹籠を持ったり、ベンガルの吟遊詩人バウルの姿をした兄さんたちの踊りののどかさ、垢抜けなさが、かえって会場となったオスロのホールとはまったく違う土の匂いのする世界を感じさせていいじゃないか、と思って見ていたら、フィナーレに近づいたらしき踊りの一団が、何やらたたんだ布の端をみんなで持ってぱっと開こうとしている…。
ぎゃあ、バングラデシュの国旗だ。緑地に赤い丸の大きな旗をどばっと広げ、その上に白い鳩の人形をふわふわ飛ばすというあまりに学芸会チックな演出。しかも旗の真ん中には切れ込みが入っていて、そこから睡蓮の造花を持ったお姉さんが上半身を出してくるくる回っている….。
私は呆然としながらも「よっしゃそれでいい!」などと言って手をたたいてしまいました。ユヌス教授、舞踊団を拍手しながら見送る笑顔が少しひきつっていましたね?
ベンガル舞踊チームが去り、授賞式のセレモニーが終わって立ち上がった人たちのざわめきは何を言っているかわからなかったけれど、私があの場にいたら隣の人とまず間違いなく「なんかものすごかったですねえ、あの踊りのフィナーレは…」と言っていただろうと思います。
日本でも中継されましたかね、あの踊り…。