ダッカ近郊のサバールで起きたビル崩壊のニュースは、日本のみならずBBCやCNNなどのメディアでも大きく報道されている。バングラデシュを支える縫製産業でまたしても起きた悲劇で、犠牲になった人の数の多さもあり、安価で良質な衣料を先進国の私たちが手に入れられるのは劣悪な環境で働いている人たちがいるからだということを改めて世界に知らしめる結果となった。

今回の事故が発生した直後から、警察、消防、軍などに加え多くの市民が救援に駆けつけた。サバールに住むシャプラニールのダッカスタッフは、事件の翌日交通が麻痺し出勤できなかったので木曜日は仕事を休み、現場で瓦礫の除去にあたっている。また、ある市民グループはソーシャルネットワーク上でボランティアを呼びかけ、医薬品の調達や現場でのボランティアとして活躍している。

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<バングラデシュニュースサイト bdnews24.comより>
ビルが崩壊してから既に72時間以上が経過しているものの、生存者がまだ救出されているため、捜索を打ち切るつもりであった政府は改めて生存者の救出を継続すると発表したという。

建築基準を無視して建設されたビルは、法律があっても守られることの少ないバングラデシュの社会問題そのものを映している。また立ち入り検査の結果、建物が危険な状態にあるとして出入りを禁止したにも関わらず操業を続けた工場は、おそらく(先進国の)取引先への納期というプレッシャーを受けたもので、 今回の犠牲となった多くの若い女性たちはが先進国の消費者が求める安い衣料を作るために安い賃金で働き続けていた。幾重にも重なった搾取の構造の底辺にいるバングラデシュの労働者にしわ寄せがきているということが、今回の事故で改めて見せつけられた。日本に住む私たちもこの連鎖の反対の端にいて、今回の事故の当事者であることを強く肝に銘じたい。 

ちなみに、この崩壊したビルに入っていたBRAC銀行は立ち入り禁止の指示を受けて、27日はスタッフを出勤させなかったため、難を逃れたということだ。危機管理という視点から今回のBRAC銀行の判断は非常に適切だったといえる。止めるという判断は時として取るのが難しいが、発生しえるリスクを想定してタイミングよく判断を下すことを見習いたいと思う。