最近のバングラデシュでの食料品や日用品の値上がりは凄まじいものがあるのですが、今月とくに激しく値上がりしたもののひとつに「石けん」があります。事務所でもよく使っているLUX石けんの大きいやつは、1個21タカから32タカ(1タカ≒1.6円)になってしまいました。ほかの石けんがいくらぐらいになっているのか、まだチェックしてませんが、これはとても困ったことです。
バングラデシュのスラムや農村部では、今も「トイレの後や食事の前は石けんで手を洗いましょう」というセリフを保健ワーカーやNGOが口を酸っぱくして言い続けています。シャプラニールのプロジェクト地でもそうです。いまだに石けんで手を洗う習慣がついていない人も、石けんを買うお金があったらお米が買いたい、と言う人も少なくありませんが、長年の手洗いキャンペーンのおかげで村やスラムでもかなり石けんの使用は一般的になりました。
しかし、いっきに1.5倍以上、というこのひどい値上がり。石けんの大きいのとお米1キロがほとんど同じ値段だったら、そりゃあ「石けんなんてそんな高価なもん買えるかい」ということになりますよね。
石けん値上がりの理由は「パーム油の値上がり」ということらしいですが、それにしても値上げ幅が大きすぎないか?便乗値上げじゃないんだろうか。インドでは1個あたり1ルピー(≒2.5円)の値上がり(→Times of India 7月2日)なのに、なんでバングラデシュでは10タカ以上も上がるんだ?工場はバングラデシュ国内にあるはずだけど、原料の輸入にバカ高い税金がかかっているからなのか?
私たちは家事使用人として働く少女たちのためのプロジェクトをダッカ市内3ヶ所で実施していますが、最初の2年弱のパイロット・プロジェクトの評価をしたとき、ダッカ北部のコライル・スラムのセンターに通う少女たちが言っていたことを思い出します。
「このセンターに通う前はあんまり石けんで手を洗ってなかったの。でも今はトイレのあとやご飯の前は必ず洗うようになった」
「お父さん、お母さんが石けんを買うお金がもったいない、って言ったら、病気になって病院に行かなきゃならなくなったら、もっとお金がかかるよって言って石けんを買ってもらうの」
そうやってせっかく石けんを使って手洗いすることが身についた女の子たち。スラムで厳しい生活を送る彼女たちの親は、これまでどおり石けんを買ってくれるかどうか。
スラムには揚げ物なんかの廃油はたくさんあるだろうから、廃油を使った手作り石けん教室をやるのもいいかなあ。うまく作れたら売れるかもしれないし。でも、廃油石けんづくりに欠かせない苛性ソーダは劇薬だから、年端もいかない少女たちに扱わせるのは危なすぎるか…。
うーん、困ったことです。