ダッカに戻った14日、空港から家に着いてテレビをつけたら「チャンネル i」で名物レポーター&ディレクターのシャイク・シラーズ氏がコタリパラからボートレースの中継をしていました。カヌーを長くしたような長いボートにはくじゃくなどのオブジェの飾りつけがされ、数十人の漕ぎ手の真ん中あたりには太鼓をたたきながらリズムを取る人が乗っていて、岸辺で声援を送る観客もたいへんな数。なかなかの盛り上がりです。
この「ノウカ・バイチ」と呼ばれるボートレースはベンガル地域で伝統的に行われているお祭りのひとつで、雨期の後半にあたるベンガル暦のバッドロ月(8月中旬~9月中旬)からアシン月(9月中旬~10月中旬)の間に各地で行われます。今年は9月がまるまる断食月にあたっていたので、イード明けの今頃に実施されるところが多かったのかもしれません。(写真はバングラペディアのBoat Raceの項から拝借したもの。だいぶ古い写真みたいですね)
英字紙Daily Starを購読すると週末についてくるStar Magazineの今週の特集もこの「ノウカ・バイチ」。クルナのルプシャ川で大規模に行われたボートレースの様子が写真入りでとりあげられています。ルプシャではここ2年ほど、携帯電話会社大手のバングラリンクがこのイベントのスポンサーになっているそう。
こういった伝統的なボートレースや村芝居などは以前はどこでも当たり前にみられたようですが、だんだんと姿を消しつつあります。シャプラニールの昔からの活動地のひとつであるマニックゴンジ県ギオール郡あたりも、かつてはさかんにボートレースやホース(馬)・レースが行われたといいますが、最近ではほとんどみられなくなってしまいました。クリショク・メラと呼ばれる収穫を終えた後の農民たちのお祭りも最近ではめっきり少なくなりました。
テレビなどの娯楽が増えたことや、稲作が乾期の灌漑稲作中心に変わって収穫を祝う時期がずれたことなど、いろいろ理由はあるようですが、伝統的なお祭りが廃れていくのはさびしいものです。そんな中で「チャンネルi」のシャイク・シラーズ氏はクリショク・メラやボートレースなど農民・漁民たちの間に伝わる無形の伝統文化の保存・復興にも熱心です。
長いボートに数十人が乗り込み、速さを競うボートレースはなかなか見応えがあり、観客も集まるので、いくつか今も盛んな地域があるようです。ルプシャのレースのボートは150-200フィートといいますから、45-60メートルもの長さ。それに70人が乗り込んで全力で漕ぐ様は相当な迫力でしょう。私もまだ生で見たことがないので、ぜひ目の前で見てみたいものだと思います。クルナのルプシャ川はサイクロンの緊急救援や復興支援でバゲルハット県に向かう途中、何度も渡った川。あそこでやってたんだなあ。見たかったなあ。
伝統的なお祭りが消え行くバングラデシュでせめて生き残ってほしい、ボートレース。バングラデシュから川や土の匂いがするお祭りがなくなってしまったら、つまりません。