こんにちは。コミュニケーショングループ インターンの村田です!
初のブログ記事執筆で緊張していますが、皆さんが少しでもバングラデシュの持つ魅力をすぐそこに感じられるような記事にしたいと思います!
突然ですが、「ノクシカタ刺繍」って聞いたことありますか?私は最初全く聞きなれない言葉だったのですが、知れば知るほどとっても奥深い世界が広がっていたんです…!今回は、そのノクシカタ刺繍の魅力を皆さんにお伝えしていきます!
「ノクシカタ刺繍」って?
まず、ノクシカタ刺繍がどんなものか簡単に説明します。ノクシカタは、バングラデシュとインドの西ベンガル州を含むベンガル地方で作られている刺し子のことで、「ノクシ」はデザイン、「カタ」は刺し子の布を意味します。直訳するとデザインを施した布…ですが、そんなシンプルなものではなく、ただの装飾を超え受け継がれてきた技術なんです!もともとは使い古したサリー(女性の民族衣装)やルンギ(男性の腰巻き)などを何層にも重ねて縫い合わせ、刺し子を施してふとんカバーや肌掛けにして再利用する習慣から生まれました。この伝統的な刺繍技術は母から娘へ、そして地域へと広がり、受け継がれているのです。
モチーフやデザインに込められた意味
さて、ノクシカタのデザインですが、これがまたすごく多彩で、主にベンガル地方の女性たちが日常で目にするものや農耕器具、動物など、身近なモチーフが描かれているのが特徴的です。しかもそれぞれにきちんと意味が込められています。
例えば「生命の樹」はあらゆる生命がより集う楽園、同時に誕生や成長、死、再生という生命の循環や多産の能力も意味しています。「象」は豊かさや富の象徴で、「魚」は豊穣や多産のシンボル。どちらもバングラデシュではとても親しみやすい存在です。私が特に好きなのは「鳥」のデザイン。幸運な出会い、家族や友人同士の愛を意味するモチーフだそう。鳥のデザインの小物はたくさん日本で見かけても、このノクシカタの鳥はどこか日本にはないテイストでたまりません。
ノクシカタ刺繍を手に取ってみると・・・
実際にノクシカタ刺繍を手に取ると、その魅力がさらに感じられます。刺繍された布に触れると、その細かいステッチのひとつひとつに、作り手の手仕事の温かみが伝わってくるんです。そしてノクシカタ刺繍の特徴のもうひとつは、モチーフの周りに生地と同色の糸で施した刺し子。これによって、ほかの刺繍にはないふっくらやわらかな表情になっています。
私も最初にノクシカタ刺繍の小物入れを手に取ったとき、その細やかさとデザインの美しさ、作り手の個性が感じられる手しごとの温かみにすっかり魅了されてしまいました。
廃れかけていたノクシカタ刺繍とNGOの挑戦
さて、ここまでノクシカタ刺繍の魅力についてたっぷりお伝えしてきましたが、実はその裏には現代にいたるまでの紆余曲折とドラマがあるんです。これがまた、ノクシカタ刺繍の奥深さを感じさせる部分でもあるんですよね。
今ではバングラデシュを代表する民衆芸術と呼ばれるようになったノクシカタ。でも、実は独立戦争や近代化の波の中で、この技術は廃れつつあったのです。でも、そんなときに立ち上がったのが現地のNGO「BRAC」。独立間もない1978年に、BRACは農村開発の一環として、貧しい女性たちへの収入向上プロジェクトを開始し、その取り組みからノクシカタ製品の生産が広がっていきました。戦争で夫や家族を失い、生活手段がなくなってしまった女性たちにとって、ノクシカタ刺繍は収入を得るための新たな道となりました。
シャプラニールとノクシカタ刺繍
私たちシャプラニールはノクシカタを通じてバングラデシュの魅力を日本で伝えてきました。1989年、BRACの手工芸品販売部門である「アーロン」のノクシカタを商品として日本に紹介。現在も、ノクシカタ刺繍のワークショップ等を行っています。
女性たちの憩いの場として・・・
ノクシカタ刺繍は、ただの収入源というだけでなく、昔から女性たちの大切な交流の場でもありました。この刺繍は一人でコツコツと進めるのではなく、同じ地域に住む色んな世代の女性たちが中庭なんかに集まって、おしゃべりしながら楽しんで行うもの。この習慣は今でも続いていて、ノクシカタ刺繍は単なる手仕事以上に、地域の女性たちが繋がる場としての役割を果たしているのです。また、バングラデシュでは宗教的な制約から女性が外で働くのが難しいこともあり、家にいながらできるノクシカタ刺繍はピッタリの仕事。だから、どんどん広がっていったのですね。
まとめ
ノクシカタ刺繍は、美しい刺繍というだけではなく、ベンガル地方の女性たちが世代を超えて紡いできた大切な伝統なのです。母から娘へと受け継がれていく技術と想いがぎゅっと詰まっていて、それはまさにベンガル人の心そのもの。ノクシカタ刺繍のアイテムに出会ったら、その背景にある物語や温かみを感じてみてください。きっと、その魅力にさらに引き込まれるはずです!
コミュニケーショングループ インターン 村田千織