ネパールが子どもの権利条約に批准したのは条約ができて1年後の1990年です。この間、多くのNGOや行政が児童労働削減のために活動してきました。
最近では、2018年から10年間の児童労働をなくすためのマスタープランが労働省の下策定されました。この中では、今までの活動が行政、NGO、経済界などそれぞれで行われていて効果が不十分だったとの反省から、今後は協働して取り組んでいくべきと言うことが述べられています。そして、2024年までにあらゆる形態の児童労働を撤廃しようという野心的な目標を掲げています。
シャプラニールでは、首都カトマンズの南西部に位置するマクワンプール郡モナハリ村(Rural Municipality)という地方部で児童労働削減を目指した活動を進めるための、調査を今年進めています。カトマンズなど大都市で働く子どものほとんどは地方から出てきています。そのため、児童労働の送り出し地域で、コミュニティの子ども自身や保護者への普及啓発、そして地方行政の能力強化を通じて、働くために出ていく子どもを減らしたいのです。
その活動を始めるためには現状を知る必要があります。そのため、モナハリの中でもハイウェイに近く児童労働に出ている子どもが多い4つの区※で600世帯を訪問をして、世帯状況、子どもの教育や児童労働に関する情報を収集しました。※Rural Municipalityの中に9つの区があり、区長、区議員、区職員がいる(はず)。
また、モナハリRural Municipalityと4つの区の区長や、学校関係者などから聞き取りを行いました。マスタープランを主導している労働省の下にある労働事務所は本来、児童労働のモニタリングをする役目を負っていますが、全くこれまでそのようなことはしてきたことがないということが分かりました。
これまで私自身が現地で聞き取りして感じたのは、貧困だけが原因で児童労働に子どもが出ているというよりも、何かが掛け算されることでそのリスクが高まっているのではないかということです。まだまだ男性が経済的、社会的に力を持ち、頼らざる得ない存在である社会で父親を亡くした、または再婚家庭で新しい親と子どもの関係がうまくいっていないというケースでの児童労働が多い気がするのです。ただしこれはまだ感触。早合点してはいけません。世帯調査の結果の分析は現在実施中なので、その結果から事実を基にどのような活動が有効なのか具体的にまた考えていきます。活動開始前には改めてご案内したいと思います。
子どもの権利条約30周年を迎えて。 ネパール事務所長 勝井裕美