日本のCOVID-19の一日の新規感染者数も少しずつ減っているようですね。ネパールの数値は気が付けば、毎日新規感染者数は100人前後に落ち着いてきており死亡者数がゼロの日も出てきました。日ごとの陽性率も5%を切るようになっています。この減少の理由を医療専門家も明確には言えていません。

ただ、一因としては検査や要請後の治療費の有料化を政府が発表して検査数を受ける人が減り、コンタクトトレーシングも行われなくなったことは挙げられると思います。その有料化はその後裁判所の命令で撤回されたものの、検査数の回復にはつながりませんでした。また、一度ネパールに戻ってきた海外出稼ぎの人たちが再度出稼ぎに行く流れがありますが、そういった場合は陰性証明書を求めて陰性と思われる人たちが検査をするので自然と陽性率は下がるとも言われています。そのため本当は市中感染は広がっているという意見も多いですが、一方でそうだとしたらもっと病院が陽性患者であふれているのではないか、死者も増えるはずだがそうなっていないのだからやはり感染者が減っているのではないかという声もあります。

そんな実際のところが見えない中でも、やはりワクチンへの関心は高い、いや高かったように思います。ネパールも他の南アジア諸国にもれず、インドと中国のワクチン外交の渦中にいます。まずはインドからオックスフォード大学とアストラゼネカ社が開発しインドの製薬会社が製造したCovishiledを100万回分、無償提供してもらいました。最近になって中国から50万回分を無償提供してもらえることになりました。COVAXからは人口の20%分を支援してもらう予定です。インドとの関係は、中国がネパールに援助外交を展開する中で領土問題も絡んでここ1年ほど冷え込んでいましたが、改善の糸口になるのではないかという論調が多数です。さまざまなところでインドからの「ギフト」という言葉を聞きます。

ネパールでは人口約3,000万人のうち14歳以上である72%(約2,100万人)の国民全員に無料接種すると首相は宣言しています(接種は義務ではありません)。1月27日からは第一弾として医療関係者等へインドから提供されたワクチンの接種が始まりましたが、ワクチンの説明不足、準備不足、見積もり間違いで当初目標の43万人には全く及ばない約18万人しか期間中に接種できませんでした。その後、ジャーナリスト、地方自治体職員などへの接種が始まっていますが、対象の人に本当に届くのか疑問視されています。そもそも医療関係者の次の優先接種対象は高齢者だったはずが、今手元にある在庫数に合わせて対象を選んでいるようで後回しになっています。そのような中で、当初はうちの職員からもワクチンいつかな?、副作用ってどうかな?という話がよく出たものですが、最近は話題に上がりません。無償支援以外にインドのCovishiledを200万回分購入する話が出ていますが、自分の番は当分先だろうと冷めた目になっているのでしょう。

ちなみに、ワクチンを常温の2-8度で保存可能なCovishiledはネパールの既存の保管施設で対応可能なためネパール政府はCovishiledを最優先で入手したい模様です。が、中国のSinopharm、ロシアのSputnikV、インドの製薬会社Charat Biotech開発のCOVAXINの使用承認手続きも進められています。(2021年2月17日現在)

時々、絶対無理だろうと思っていたことが何だかできてしまうネパールですが、世界的な今回のワクチン争奪戦ではその才覚は発揮できるのでしょうか。残念ながらネパールだけではどうにもならない気がします。人々の格差を広げたと言われるCOVID-19。そのワクチン確保状況は既に各国の経済力の差をまざまざと見せつけていますが、人々の健康格差を広げる結果にならないようにしなければなりません。

マスクなしで話し合ったり笑いあったり、やはりしたいものです

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ネパール事務所長 勝井裕美