「ラトバ、ラトバ!ラトバ、ジャンチャ!」(*1)
今年の春、バス停兼タクシースタンドでタクシーを待っていると1台のマイクロ(ハイエースを使った中型バス)が目の前に停まり、横開きのドアが勢いよく開くと同時にカラシ(乗客集めや料金徴収係)が飛び出して来ました。ラトナパークという公園との循環ラインを走る14番のマイクロは通勤時間にもあたって、車内に座る場所は見当たりません。この時期、新型コロナ感染は低く抑えられていましたが、それでもできるだけ空いたバスを探す人も多く、立って乗ろうという人はなかなかいません。
でも、多くのお客さんを集めるのがカラシの力の見せどころ。
ますます大きな声で「ラトバ、ラトバ、ラトバ、ジャーダイナ?」(*2)と、様子見のお客さんを誘います。
声掛け中も受け取ったしわくちゃのお金をカウントする両手は止まらず、なかなか器用です。その手は私よりしわが多く埃だらけで、なにより小さいのですが背丈は私の肩ぐらい。まだ成長期にも至っていない小ささで、顔を見れば少年なのは一目瞭然でした。
お客が増えないのを悟ってドライバーが走らせ始めると、置いて行かれないように、彼は軽やかに車内に飛び込んで去っていきました。
2010年の駐在時に比べて2018年からの2回目の駐在では、子どものカラシにはほとんど会っていませんでした。それが今年春頃から「あれ、子どもかな?」ということが増えています。
ネパールの児童労働は2008年に比べて約50万人減って約110万人(2018年データ)というILOの報告が出されました(2021年5月)。シャプラニールの駐在員や出張者の印象としても、カトマンズで見かける働く子どもは確かに減ってきたように思います。
しかし、新型コロナ感染対策のロックダウンや学校閉鎖は世界的に児童労働の増加を促すという警鐘が出されています。この問題は急激な短期間なものではなく、経済的打撃がボディブローのように各家庭に効いてきて緩やかに、でも確実に長期間起こると感じています。その対策は簡単ではありませんが、マクワンプールで始めた児童労働を防止する活動を一歩ずつ進めていきたいと思います。
ネパール事務所長 勝井裕美
(*1)「ラトナパーク、ラトナパーク、ラトナパーク、行きだよ」
ラトナパークを早口で言われると、私にはラトバに聞こえます。
(*2)「ラトナパーク、ラトナパーク、ラトナパーク、行かないの?」
シャプラニール児童労働反対キャンペーン2021(6/10~7/31)
6月12日は「児童労働反対世界デー」。そして、2021年は国連が定めた「児童労働撤廃国際年」です。私たちはこのキャンペーンを通して、世界の児童労働の実態、シャプラニールが行うバングラデシュとネパールの児童労働への取り組みをお伝えします。児童労働について知って、学んでもらい、さらに児童労働撲滅に向けて、ひとり一人ができる「アクション」についてSNS上で情報発信をしています。
▼キャンペーン特設ページはこちら。『何ができるか、一緒に考え、行動しませんか?』