前回の《ネパールのいま》を書いた6月7日からの1週間、ずいぶんと動きがあり、6月14日現在ロックダウンは緩和されました。

6月9日(火)から昨日までに3回、学生による道路での抗議活動がカトマンズなど全国の都市で行われました。彼らの主なメッセージは、まず1つが、(PCR検査対象を減らそうとしているが)しっかりPCR検査するべき!、50万人ほどになると言われている、インドからの帰国者が滞在する隔離施設の数も足らないし環境もひどいから改善すべきといった、2か月も続けてきたロックダウン期間中にできたはずの準備も改善も不十分という政府への嘆きです。もう一つは、先日政府がこれまでにコロナ対策として100億ルピーを支出をしたという発表に対して、「具体的に何に使ったのか示せ」という具体的な要求です。

私の目から見ると本当に今回、ネパール人は2か月以上よく外出禁止を守っていたと思います。が、職、収入を失い政府からの支援策もなく生活が厳しくなる人が増え、また懸命に外出禁止を守ってきたのに感染者数が増え始めてしまいました。そのため、政府の言うこと聞いているだけじゃダメなんじゃないか、もう耐えられないよ、という思いがあふれていった、そんな先週でした。

そして、6月10日(水)の夜の大臣級の会議でロックダウンの緩和が発表され、翌11日(木)から混乱がありつつ緩和が進んでいます。今回の緩和策は3段階に分かれていて、第1段階が21日間、第2段階と第3段階が各15日間で、次の段階に進む前に現状評価がなされます。

今日6月15日は第1段階中です。これまでと大きく違うのは車両および徒歩の通行が可能になったことです。郡を跨いでの移動には許可証が必要なことは変わりませんが、自由に近所を歩けるようになりました。ちなみに車両の通行には奇数偶数ルールがあります。日付が奇数の日にはナンバープレートが奇数の車両が走れるというものです。ただ、この日付が西暦ではなくネパール独特のビクラム暦なので、外国人には「今日はどっち?」を理解するのに時間がかかります。昨日6月14日はジェト月32日なので偶数ナンバーが走れた、という具合です。

当初、奇数偶数ルールは二輪車に適用外だったため交通量が激増したため、6/14夜に二輪車にも適用開始(写真は6/14日中)

当初、奇数偶数ルールは二輪車に適用外だったが、交通量が激増したため6/15から二輪車にも適用開始 (写真は6/14)

左の白い車は「3594」、右の車は「7520」

左の白い車は「3594」、右の車は「7520」と両方偶数(6/14)

まだ、不可なのが25人以上の集まりや、レストラン(テイクアウト、デリバリーは可)、ショッピングモールや映画館、美容室、長距離バスやフライトなどです。衣料品店、化粧品店は開けていいと言われていないと思うのですが、小さなところは我慢しきれずなのか開けているところも見かけます。

この緩和策は、日本のように感染者数が減ったからではなく、世論への対応として出てきたものです。6月15日9時現在、ネパールの感染者数は5760人、直近の1日の新規感染者数は425名。6月10日からは中東など世界各地から臨時退避便で多くのネパール人が帰国し始めました。ロックダウン緩和を単純に喜べる状況ではありません。ネパール人職員と話していると、ネパール人もそのことは重々承知しているようです。ただ、この緊張が長続きするか、なんとなく緩くなってしまわないか注意してみていこうと思います。

ネパール事務所長 勝井裕美

6/12の夕方、街の自転車屋さんには修理に客が集まっていた

街の自転車屋には修理の客が集まり、移動できることへの期待が高まっていた(6/12)