今回訪問した村はネパール中南部に位置するナワルパラシ郡。インドとの国境にとても近いということもあり、電気のある時しか楽しめないという制限はありますが、かなり多くの家にテレビの電波を受信する小さなパラボラアンテナが設置され、インドの衛星放送をみんなで楽しむことができるようになっています。チャンネル数は30以上もあるそうで、NHKの海外向け放送である「NHKワールド」も映っていました。でも、村人にきくと「日本の番組はない」とのことでしたので、誰もNHKが「にほん・ほうそう・きょうかい」であることは認識していないようです…。
インドのテレビドラマなど人気のある番組は、大人も子どもも、それこそ食いつくように見入っているものの、それ以外は結構流し気味。日本と同じように、ただつけてあるという感じが漂っていて、すでにテレビが日常のものになっていることが、よく分かります。また、ネパール人はインド入国に際してビザもいりませんし、なんの制限もありませんので、ちょっと自転車で1~2時間走って買い物に、ということも普通に行われています。家屋の構造や炊事、洗濯といったライフスタイル自体は以前とあまり変わらないものの、海外への出稼ぎの急増によって現金経済が村の中に浸透していく中で、テレビや携帯などの電子機器が一足飛びに普及してきている、というのが今の農村の実情だといえます。
こうした社会の変化を「いびつ」なものと考え、それよりも先にすることがあるでしょう、といった発想をしてしまうことが、外国人である私たちにはよくあります。そうならないように注意しないと、本当に必要なこと、大切なことは、何も見えてきませんよね。