ネパールの村人の家はとってもシンプル。写真は南部の平野にほど近い、丘陵地に住む人の家の様子です。木組みに土の壁と藁葺き(わらぶき)屋根という典型的な形で、これが夏に涼しくて冬は暖かいという、とっても合理的な形なんですよね。現金収入が増えていけば、素材もレンガやセメントに変わっていくのでしょうが、そうした変化が人間の生活にとって本当にいいことなのかどうか、今でも考えこんでしまうときがあります。
14年前、バングラデシュで同じようなことを先輩駐在員にもらしたら「実際に藁葺き屋根の下で大雨にうたれた経験もなしにそんな甘っちょろいことをぬかすな」と言われ、奮起して大雨の時をねらい、村人の家に泊まらせてもらったことがあります。シンプルな素材でできた家で生活する心細さや意外なほどの修繕の手間などは、確かに理解できるようになったのですが、やはり根本的な疑問としての違和感は今でも残っています。
いわゆる近代的な価値観を無理矢理おしつけるような援助が依然としてまかり通っている開発の現場で、私たちがすべきことは何なのか。まるで若くて経験も少ない学生のような悩みを、いまだにもち続けています。