今回のオカルドゥンガ出張では往復に飛行機を利用した。双発の飛行機でカトマンズから30分でルムジャタール(オカルドゥンガ)の空港に着く。
この30分というのはあくまでも飛行時間のことで、霧の多い冬の時期は出発時間が大幅に遅れることが多く、空港で2~3時間待ち、ひどい時には欠航ということもある。
行きのフライトは朝8:45発だったものが、霧のために3時間遅れて出発した。左にヒマラヤの山々、2,000m級の山が連なるのを下に見ながら飛ぶこと約20分。ウゥゥゥゥ~ンとプロペラの音が騒がしい飛行機がオカルドゥンガの上空に差し掛かった。周囲とは明らかに異なる赤土色の台地が現れた。どうやらルムジャタール空港はそこにあるらしい。舗装されてない空港に着陸すると、もうもうと土煙があがった。
小さな空港に降り立つと、そのまま空港の外に出て荷物の到着を待つ。空き地に沢山の人たちが居るのは、見送りや到着客を出迎えるためらしい。
思い思いの格好で待っている人たちのようすはとてものどかだが、かつてマオイストの襲撃によって多くの死者(治安関係者)を出したというだけあって、空港の周りにはまだ鉄条網が張り巡らされ塹壕もそのまま残っていた。そして今でも軍隊が駐屯している。
荷物が出てくるのを待っていると、突然獣(けもの)臭くなった。と、大きなヤギが少し離れたところにいる。実はこのヤギ、この辺りでは有名なヤギなのだ。5、6年前、駐屯する軍隊が東部平野からヘリコプターに乗せて連れてきたのだという。当然、食料としてである。ある日殺そうとしたが、このヤギが涙を流して殺さないでくれと頼んだという。その出来事があって、誰もこのヤギを二度と食べようとしないのだそうだ。
今でも元気に村の中を自由に歩き回っている様子は、確かに普通のヤギではないように見える。十何キロも離れた村や郡庁所在地へも一匹で歩いて行って、また空港に帰ってくるのだとも聞いた。しかも、夜は他の動物に襲われないよう人家に泊まり、夜が明けると再び歩き出すのだという。オカルドゥンガのおとぎ話のようなエピソードだ。