2021年10月26日、「Peace & Democracy Forum~沖縄と世界の課題から平和と民主主義を考える~」と題したウェビナーを開催しました。

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太平洋戦争で悲惨な沖縄戦が繰り広げられ、今もなお米軍駐留の負担を押し付けられている沖縄から、命の尊さと平和の大切さを世界に発信するとともに国際平和の創造に貢献することを目的とし2001年に創設された「沖縄平和賞」。その受賞団体であるNGO有志と沖縄の市民団体により企画・運営されたのがこのフォーラムです。

私たちNGOの活動(貧困削減、難民支援、医療支援 etc.)は平和と民主主義が前提であり、その活動が平和の礎になると考えています。しかし、残念なことに世界各地で平和と民主主義の危機が訪れています。そして私たちが直面する社会課題の多くは国境を越えた問題として考えなければならなくなっています。

このような状況の中、それぞれの活動や現地の状況を知り、平和と民主主義の大切さを考えるきっかけになれば、という想いでこのフォーラムを企画しました。

沖縄県浦添市を拠点とするNPO、うらおそい歴史ガイド友の会の事務局長・玉那覇清美(たまなは きよみ)さんは、地元の人々や本土から来る観光客などと沖縄戦の戦跡を巡り、戦争の悲惨さを語り継ぐ活動について報告してくれました。これまで案内をした人々からの反応で印象に残っていることはありますか、という問いかけに対し「『沖縄戦』という言葉を知らない人が多いことに驚かされました」と答えた玉那覇さんの言葉が重く私たちの心に突き刺さりました。

難民支援協会(JAR)の事業を引き継ぐ形で新たに設立されたパスウェイズ・ジャパンの折居徳正(おりい のりまさ)さんと、かつてJARの招へいで沖縄を訪れ、現在沖縄で暮らすシリア人のザカリッヤさんからは、増え続ける難民の定義や現状についての説明に続けて、紛争が続くシリアの美しい海や貴重な遺跡の写真が紹介されました。ザカリッヤさんは、笑顔の絶えない沖縄のおじい、おばあとふれあう中で感じたことを次のように語ってくれました。「激しい戦争を経験した沖縄の、こんなに平和で幸せな様子を見て、いつかシリアの紛争も終わり人々が幸せに暮らせる日が来ることを心から祈っています。」

難民を助ける会(AAR Japan)ミャンマー・ヤンゴン事務所駐在員の大城洋作(おおしろ ようさく)さんは、国軍によるクーデターの後混迷が続くミャンマーの状況をまとめて報告してくれました。その中で、最近行った調査で90人中48人が無収入となってしまっていること、その対応として物資支援などを行っているものの、国軍から反政府活動との疑いを受ける恐れがあるため、現地スタッフの安全を最優先に活動を続けていることなどが伝えられました。大城さんは「厳しい状況をお伝えしましたが、最後はポジティブに」と述べ、「若者たちが団結し立ち上がっている姿に希望を感じるのです」と締めくくりました。

続いて、アフガニスタン現地NGO ・Your Voice Organization(YVO)代表のサビルラ・メムラワルさんが、タリバンの圧政が続く現地から報告してくれました。YVOは最近まで日本国際ボランティアセンター(JVC)のパートナーとして活動してきました。サビルラさんは、かつて武力闘争に傾倒した経験がありながら、JVCの元駐在員と出会い、暴力ではなく対話による解決が重要であることを学び、今は若者を中心とした平和教育事業に取り組んでいます。今年8月15日にタリバンが復権した後の厳しい状況を伝えてくれましたが、「このようにインターネットで海外とコミュニケーションをとること自体、危険ではないですか」との問いに「すぐに危険が及ぶことはないと思うが、日に日に状況は悪化しており、全く問題がないとは言い切れません」との答え。現地の緊張感が伝わってきました。

最後にシェア=国際保健協力市民の会で在日外国人支援事業を担当する山本裕子(やまもと ゆうこ)さんから、在日外国人を対象とした医療支援活動について報告がありました。NGOだけではなく、医療機関や行政などさまざまな組織・人々と連携して活動を進めていること、またネパール人を対象とした活動ではネパール人の中からボランティアを募り、一緒に活動していることなどが伝えられました。その中で、「『大丈夫』と言っている人が実は全然大丈夫ではなかった、というケースがよくあるのです」という話があり、一人ひとりに寄り添うきめの細かい支援活動の様子を伺うことができました。

報告のプレゼン資料ではたくさんの写真も紹介されましたが、セキュリティ上センシティブなものもあるため、参加者にも撮影や録画・録音はしないようお願いしました。そのため、このブログでも写真は掲載していません。しかし、公開できる部分を編集して、後日You tubeで録画したものを公開する予定です。準備ができ次第お知らせしますので、是非ご覧いただければと思います。

事前の申し込みは約130人で、実際に参加してくれたのは70人強と、かなり少なくなってしまったのは残念ですが、それぞれの報告者から発せられた深く重たいメッセージは参加したみなさんの心に届いたのではないかと思います。私たちはこのフォーラムを一回限りのイベントにせず、今後も継続した取り組みにしていきたいと考えています。

事務局長 小松豊明