2022年が始まりました。
東京は、雲一つない晴天に恵まれ、いつもの公園の丘から家族と一緒に初日の出を拝むことができました。
新型コロナウイルスのパンデミックによる不安と悲しみ、世界的な紛争、民主主義の崩壊といった様々な危機を忘れることはできなくても、新しい希望の光が一瞬見えたような気がしました。
家に帰ってから、昨年末新聞で見かけた記事が気になり購入していた、『やさしくない国ニッポンの政治経済学(田中世紀著、2021年10月)』を読んでみました。イギリスのCharities Aid Foundationという財団が作成した「世界人助け指数(World Giving Index)」で、日本は126カ国中107位、先進国では最下位だったというのです。この数字だけを見ると、日本人は人助けをせず、他人にやさしくない国民ということになります。東日本大震災で互いに助け合う姿が世界に発信され称賛を浴びた日本人が、そんなはずはない・・・。しかしこの本では、様々な調査結果を紹介しながら、日本が「自助」や「自己責任」が強調され、「利他」「共助・公助」に重きを置かない社会であることを浮き彫りにしていきます。さらに前述の財団は、日本は歴史的にも先進国の中で市民社会が非常に脆弱な国であると指摘しています。
その要因を探るために、高収入の人の方ほどボランティア活動に参加する傾向にあるという「資源仮説」や、日本人は他の国の人に比べて人を思いやる能力が著しく欠けているという「共感仮説」、宗教的な人ほどボランティアに参加しやすい「宗教仮説」など、さまざまな仮説を立てて検証するのですが、どれも決定的な説明はできません。そして、政治的な不信が人々の社会参加を阻んでいる可能性があること、自分や家族は信頼できるが、かつてあった社会制度が失われることにより他の個人を信頼することができず社会貢献の意欲が高まらない、といった分析をしています。
一方で、内閣府の調査では、6割以上の日本人が「社会のために役に立ちたい」と思っていると回答している事実を指摘。上記のような要因の影響により社会貢献や利他的な行為をためらっているのだとしたら、何らかの変化によって世界に誇れる「思いやりの国ニッポン」「助け合いの国ニッポン」を実現できる可能性はある、と結んでいます。
シャプラニールは、2021年に定めた5カ年の中期ビジョンで、「市民の力とツナガリで社会課題を解決する」ことを目指しています。日本はもちろん、私たちの活動地で暮らす人々も含め、より多くの市民とともに誰もが安心して暮らせる社会を作っていきたいと、決意を新たにしました。
2022年1月1日
事務局長 小松豊明