2023年は、シャプラニール、NGO、市民社会にとって大きな節目となる出来事がいくつかありました。
日本のODA(政府開発援助)に関する基本方針を定める「開発協力大綱」の改定、G7広島サミットの開催とそれに合わせて行われたC7(Civil7)としての政策提言活動などです。
いずれもその前年からNGO、NPOなどの市民社会組織が結束して取り組みを開始し、長期間にわたって政府等に対するアドボカシー活動を行いました。いずれにおいても、一定の成果を出せた部分と本質的な影響を与えられなかった部分がありましたが、多様な市民社会組織が参加して幅の広い議論ができたことはひとつの大きな成果だったのではないかと考えています。数年後には、同様の取り組みが必要なタイミングがまた巡ってきます。その時に向けて、今回の経験や学びを次に伝えていく、あるいは継続的な取り組みにしていくといったことが必要であり、今回の活動に関わった者としての責任だと考えています。
2023年は、2015年から2030年にかけての世界的な取り組みについて合意がなされた「2030アジェンダ(SDGs)」や「仙台防災枠組」の中間年でもありました。その達成へ向けての見通しについては悲観的な報告もありますが、ここで諦めるわけにはいきませんし、私たちにできることはまだたくさんあるはずです。一方で世界情勢に目を向けると、香港、ミャンマー、アフガニスタンなどにおける民主主義の崩壊と人権の抑圧が続き、ウクライナ、ガザにおけ戦争の解決の糸口が見いだせないままです。日本でも、辺野古の埋め立てに関して沖縄県民の民意に基づいた公益よりも国の公益が優先され、史上初の代執行が強行されるという、民主主義の基盤が揺るがされるような出来事が起きています。
このような状況の中、私たち市民社会、NGO、そしてシャプラニールはどのような役割を果たすべきなのか。何ができるのか。「豊かな先進国が貧しい途上国の貧困問題を解決するための手助けをする」といった、これまでの「援助」ではなく、国境を越え「共に暮らしやすい社会をつくっていく」という方向へ、私たちの考えも切り替わりつつあります。
2024年は、バングラデシュやネパール、そして日本で取り残されてしまっている人々、課題に取り組みながら、シャプラニールの方向性について大きな変化をもたらすような議論と決定を進めていく年になります。その議論に参加いただき、あるいは見守っていただきながら、引き続きシャプラニールを支えてください。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
事務局長 小松豊明