こんにちは、国内活動グループインターンの小野です。
突然ですが、皆さんはエシカルという言葉耳にしたことありますか。
エシカル消費、エシカル食品、エシカルファッション、最近ではエシカル就活という言葉まで存在するほど、エシカルという言葉が身近になってきています。直訳するとエシカルは「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞で、法律に定められてはいないが、良識的に考えることを指し、特に最近では環境や地域、社会への配慮を通し、よりよい未来をつくるといった解釈がされています。
今回は“エシカル消費”をテーマに、フィールドワークや刺繍体験などを行っている大分大学教育学部の講義をご紹介します。この講義では、フェアトレードや災害地支援、地産地消、環境配慮などをエシカル消費の具体例として学び、さらにシャプラニールのフェアトレード商品でも取り扱っていたバングラデシュの「ノクシカタ」の刺しゅう体験も取り入れています。
ノクシカタとは…
バングラデシュの言葉ベンガル語で「ノクシ」はデザイン、「カタ」は布という意味があります。
もともとは使い古したサリー(インド文化圏の女性が着る民族衣装)などの布を何層にも重ねて縫い合わせ、刺し子を施して布団カバーや肌がけにして再利用するというリサイクルの発想から生まれました。今でも、伝統的な刺しゅうの技術は、母から娘へと受け継がれ、母親が自分の家族のためにノクシカタを作っています。
ここでノクシカタを製作した学生さんの声をご紹介します!
- 制作時間を教えてください。(講義時間3コマ=4.5時間)
平均約9時間:生徒全員が講義外の時間を利用し、作品を完成させていました。手作業は実に時間がかかるといった声が聞かれました。 - 自分の作品を販売するとしたらいくらで売りたいですか。
平均約620円:最も低い価格設定をした方は300円、高い方は1000円+税という結果でした。手間のかかるものが正当な価格で取り扱われないのは絶対にあってはならないことだと思ったといった声も聞かれました。 - ノクシカタを実際にやってみた感想を述べてください。
最初は「ただの縫物だろう」と思っていたが、実際に作品を作り、他の人の作品を見ていく中で、ノクシカタの自由度の高さや、一人一人が持つそれぞれ違う個性のすばらしさを知り、ノクシカタの奥の深さを学んだ。絵で表現するとき、自分は鉛筆や筆などで紙に描く方法や、最近ではタブレットやパソコンで画面に描く方法しか知らなかったが、今回色のついた糸と針を使って布に刺す方法を知り、人の手で作ることは大変だと思うが、機械で作るものとは違う温かさみたいなものがこもっているのではないかなと思った。(一部抜粋) - 「世界の縫製工場バングラデシュで何が起こっているか ― 労働の課題と企業の挑戦(長田 華子)http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/702_06.pdf」を読んで,ノクシカタ体験と照らし合わせて考えたことを述べてください。
日本でも男女間の格差や労働環境についての記事やニュースを見ることがあるけど、日本よりもっと劣悪というのはとても印象に残った。管理職はすべて男性であり、叱責・業務遂行の強要・権利の非対称性・セクハラなど様々な問題を抱えていることが分かった。バングラディシュ政府は行動指針を発表・労働法の改善など、またILOは寄付金で労働環境を改善する活動・NGOと共同で生存者の社会復帰、技能向上プログラム、犠牲者への補償金の支払いなど、改善が必要であると私は感じた。ノクシカタをはじめとした刺繍や縫製業が多くの女性を救っていることを知り、女性にとって大切なものであるということを知ったと同時にバングラディシュだけではなく世界中が、男性女性関係なく働きやすく安心して暮らせるようになってほしいと感じた。(一部抜粋)
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<講義全体を通しての学生さんの感想(一部抜粋)>
- ラナ・プラザ崩壊事故*を初めて知り、私たちが普段何気なく着ている服をつくってくれている人たちのことをもっと真剣に考え、世界全体が自国、また自社の工場がある外国の労働環境や差別などの社会問題の解決に積極的に取り組む必要があると思う。何億人といる消費者の一人かもしれないが、わたしたちの行動が間接的に誰かを助けることができるかもしれないと考えると、無力ではないと思うから、少しずつでも意識を変えていきたい。
※ラナ・プラザ崩壊事故…2013年4月24日にバングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落した事故。犠牲者の多くは、その工場で働いていた若い女性たちだった。
- この授業で初めてフェアトレードについて知り、自分が無知であったことを痛感した。途上国の厳しい状況を学んだうえで自分が消費者として貢献できる道があることを知り、今では日常でフェアトレードマークの表示をすぐに見つけることができるようになって実際に商品を購入する機会もあった。自分の消費行動に意味があると感じて過ごしたいが、この授業がなければマークの意味を理解せず消費していたと思うので無知は怖いと思った。
- このエシカルの授業を受けて、考え方や、日常生活が少し変わりました。少しの意識で、誰かが救われると思うと、自分自身の生活にも自信が持て、充実した毎日に繋がると実感しました。今回学んだことを生活に生かし、私が教師になった際にも、子どもたちに伝えていきたいと思いました。
- この講義を通して、自分の中での価値尺度というものは、非常に極端であると感じた。よりアンテナを広げ、社会的に必要とされている行動は何なのか、どのような行動をすることが全ての人々にとって利益となるのか、そういった点まで考えることのできる人間になりたい。
授業を担当された大分大学の財津先生、都甲先生からもコメントをいただきました。
以前は「フェアトレード入門」としていた教養科目を今年度から「エシカル消費入門」としてリニューアルしました。「エシカル消費」の概念全体を知り、自身の生活にもつなげてほしいからです。以前からノクシカタ体験を行っていましたが、体験したからこその実感や考え、気づきがみられました。これまでの経験から、DVDや新聞記事だけでは実感をともなう理解はできないと感じており、体験するからこそ記憶にも残り、自身の生活やさらなる興味関心にもつながると感じています。
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今回は講義を受講した学生さんの感想を主にご紹介しました。この授業で初めてバングラデシュの現状や問題を知った、今までの自分の意識や行動を改めたいと思ったなどの感想を持つ学生さんが多く、非常に気づきの多い講義であったことが読み取れました。とある学生さんの感想に“無知というのは怖い“という記述がありました。実は私も日頃からこの言葉を意識しながら生活しています。すべてを知ることは難しいですが、知らぬ間に誰かを傷つけてしまっていたり、良かれと思ってやっていたことが本当は相手を苦しめてしまっていたりすることを減らすためには、知る努力をし続けることが大切だと感じています。また同時に何か自分にできることはないかを考えるようにしています。
今回紹介した“エシカル消費”は個人にできる行動の1つです。普段食べているものや着ているものは、“いつ、どこで、誰が、どのようにして作っているのか”という生産の背景を知り、より人や環境に優しい商品を選ぼうと意識することは、誰にでもできる消費行動だと思います。実際、まだまだ環境や人に優しいエシカル商品の数は少なく、入手することが難しい場合もありますが、だからこそエシカルな消費を行う消費者が1人でも増えることが重要だと考えます。エシカル消費という言葉が死語になるくらい、人にも環境にも優しい消費が当たり前に行われる社会を一緒に築いていきませんか。
シャプラニールのフェアトレード商品は以下サイトより購入することができます。ご興味のある方はぜひのぞいてみてください!
https://craftlink.shop/
国内活動グループ 小野