2022年7月8日(金)、シャプラニール50周年記念シンポジウム「多様な人びととの共生が 実現する社会に向けて」を開催しました。

オンラインとリアル会場でのハイブリット開催となった本シンポジウムは、全体で100名近くの多くの方にご参加いただけました。

在住外国人と日本社会の現状について知る

まず、シンポジウムの前半部では、ライター、そして、日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長である望月優大さんより、基調講演として、「在住外国人と日本社会の今とこれから」というテーマでお話しいただきました。

望月さんからは、日本に住む在住外国人にどのような人がいるのか、また、日本社会がそうした様々なルーツをもつ人々とどのように関わってきたのかについてお話しいただき、現状の日本の在留資格の制度や外国人受け入れの歴史などについて理解を深めることができました。

中でも、在住外国人の中には制度から取りこぼされている人、社会からくくりだされてしまっている人がいること、そして、彼らの抱える課題を考えるためにも、受け入れ側である我々日本社会自体について振り返って考えることが重要であると強調してお話しされていたことが特に印象的でした。

「多様な人々が共生する社会」とは?

また、シンポジウム後半部ではパネルディスカッションとして、小松事務局長がモデレーターをつとめる形で、望月さん、および、長年にわたり地域での多文化共生の活動に関わってきた認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズの横田能洋さん、NPO法人多言語センターFACIL吉富志津代さんにもご登壇いただき、この課題の当事者は誰なのか?多様な人びとが共生する社会というのはどのような姿なのか?について議論を深めていきました。

議論の中で出てきたいくつかの印象的なお話として、横田さんからは、取り組まれている活動の中で、在住外国人の方が同じ境遇の方々を支えるサポーターとして、言語力活かして地域に貢献しているといった「当事者である在住外国人のエンパワーメント」について紹介がありました。

また、吉富さんからは、多文化共生を前提として、その多様性を積極的に街づくりに生かすべきであり、そのためには、住民だれもが排除されない対等な社会参画を目指して、日本社会がかわらなければならないといったお話、さらに、望月さんからは、様々なルーツを持つ人びとが、市民社会メンバーとして社会に参加できること、自分たちの力を社会で活かせるよう形にすることを目指していく必要があるというお話がありました。

〈誰も取り残さない〉ための活動を日本でも


シンポジウム全体を通して、外国ルーツの人びとの存在なしには、我々日本社会は成り立たたないこと、しかしながら、社会の仕組みから取りこぼされている人びとがいるという実情があり、それを解決するために、受け入れ側のコミュニティがどう意識して、どう変わっていくかということが、考えなければならないポイントとして提示されました。

シャプラニールはこれまで社会の仕組みや支援から取り残された人々への支援を進めてきました。それはこれまで長年活動を進めてきたバングラデシュ、ネパールだけでなく、日本でも同じく必要だと感じています。

新たに取り組んでいる国内事業は私たちにとって大きな挑戦ですが、シンポジウム内でパネリストの方から「外国ルーツの方との取り組みの中で、文化や考え方の違いによって生じた課題を解決するために、海外で現地の方と活動し、培ってきた知見を教えてほしい」とコメントもあり、これまでバングラデシュ、ネパールで様々な人を巻き込みながら活動してきた経験を国内事業に活かしていきたいと考えています。

そのためにも、今回の議論で出てきた内容をふまえ、チャレンジを続けていきます。


海外活動グループ 菅野