2019年6月、初の出張でバングラデシュを訪れました。強烈な蒸し暑さ、スパイスがふんだんに使われた料理、聞きなれないベンガル語、カラフルな衣服など、初めてのことばかりで刺激が盛りだくさんでした。
最初に訪れた首都ダッカの印象は、多くの人々が行きかう忙しい都会。空港から事務所までの道路は大渋滞で、各地で都市高速鉄道(MRT、Mass Railway Transportation)の建設工事が進められており、この国の急速な経済発展を実感しました。
一方で、首都から離れた地方では、緑が濃くてのんびりとした風景が印象的で、ダッカとは全く違う時の流れを感じました。村で出会う人々はとにかくフレンドリーで、現地の言葉で話しかけてくれることが多かったです。まだベンガル語で「こんにちは」と「ありがとう」の二言しか言えない私は、申し訳ないと思いながらも笑顔を返すことしかできませんでした。
そんな中、現地の人々と心を通わせることができた場面がありました。 2016年から2019年にかけて実施した「みんなの学校プロジェクト」(詳しい事業概要はこちらをご覧ください)の評価で、先住民が住む北西部の地域、ディナジプール県を訪れました。この事業ではコミュニティレベルで補修教室を実施しており、イクベンプールという村でその視察を行いました。
視察を終えると、おじいさんが太鼓をどこかから持ってきて歌を歌い始めました。するとその村の女の子たちが、横一列に並び、手をつなぎながら踊りだしました。先住民のコミュニティでは女性がこうして踊る文化があるようで、シャプラニールの女性スタッフも誘われ、一緒に踊ることになりました。私は普段からダンスが好きであることもあり、喜んで参加しました。最初は間違えながらも少しずつステップを覚え、しばらく経つと女の子たちと同じリズムで踊ることができました。ステップが揃った瞬間、彼女たちはパッと笑顔になり、「そうそう!その調子!」と言わんばかりの表情を見せてくれました。お互い言葉が通じなくても、踊る楽しさを共有することによって心と心が通じ合あえた気がしました。彼女たちの笑顔は今でも忘れられません。
先住民の子どもたちは、多数派のベンガル人とは異なる言語を話し、学校でいじめなどの差別を受けたり、授業についていけないためドロップアウトしてしまったりしています。今回一緒に踊ってくれた女の子たちも、もしかすると先住民であるがためにつらい思いをしてきたのかもしれません。そんな彼女たちが外部者である私を歓迎して受け入れてくれたことに感激し、この子どもたちのために何かしたい、幸せになってほしい、と強く思った瞬間でした。
シャプラニールは今後も社会から取り残されている子どもたちを対象に、子どもの権利である教育へのアクセス・教育環境の向上を目指して活動します。子どもたちの笑顔を守るために、是非私たちの活動を応援してください。
峯ヤエル(みね・やえる)
海外活動グループ/バングラデシュ事業・ドナー対応担当
フランスの大学在学中にブラジル、モザンビークでインターンを経験。ガーナで農村開発に携わる仕事を経て、2019年に入職。
<この記事はマンスリーサポーターキャンペーン2020に際して執筆したものです。>