2019年9月に、ネパールのチトワン郡で行われている洪水防災の事業地を尋ねた。「One River One Community」を合言葉に河川の流域全体を一つのコミュニティと考え、地域住民自らが主体的に関わる防災活動の定着を目指し、取り組んできた事業。河川にほど近い集落のひとつの災害管理委員会の女性たちに話を聞くことができた。その時の、女性たちの生き生きと輝く表情を忘れることができない。
中でも調整役を務める20代前半の女性は「あなたたちは話をしながらそうやって当たり前のようにメモをとっているけど、私たちは以前そういったことを全くしなかった。この活動をする前は人前でこうして自己紹介をしたり、自分の意見を言うことがなかったの。」ハキハキとそう語った。災害管理委員会で活動するということ、それは彼女にとって単純に地域活動に携わること以上の意味を持つことにハッとした。
シャプラニールの活動は多分野に渡り、時に一言で説明が難しいことがある。そんな時「エンパワメント」という言葉がキーだと私は思っている。
日々、東京事務所でハガキの仕分け等の地道な作業に時間を割いてくださるボランティアさんたち。2020年度はCOVID-19の影響で、いつも当たり前にそこにあった顔を見ることができなくなり、おしゃべりが聞こえなくなり、本当にそれが心にコタえた1年となった。ボランティアさんからも、「シャプラニールに通うことがいかに私にとって大切な日常であったか」「行けなくなって心のバランスを崩しています」という声をお寄せいただいた。シャプラニールは一方通行で「援助」をしているのではない。海外での活動にとどまらず国内活動においても、関わる人々をエンパワメントし、それを通じて職員自身がエンパワメントされていることを、感じずにはいられない。
私の担当するフェアトレード活動、クラフトリンクも新たなスタートを切った。手しごとが持つ可能性を信じ、いかに人と人をつなげ、人をエンパワメントしていけるか、考えて考えて考えていきたいと思う。
小川晶子(おがわ・あきこ)
国内活動グループ/クラフトリンク担当
木工家具制作・販売・デザイン等インテリアの仕事、青年海外協力隊(中米ホンジュラス)などを経て、2018年1月にシャプラニールへ入職。
<この記事はマンスリーサポーターキャンペーン2020に際して執筆したものです。>