スタッフの想い

東京事務所・バングラデシュ事務所・ネパール事務所では約40名の職員が働いています。
国際協力NGOの職員が今、考えていることを語ります。


学びあい、よりよい明日へ

事業推進グループ ネパール事業担当
横田好美(よこた・よしみ)

インドの「先生」たちと(2010年、前列左から2番目)

国際協力へのあこがれ

高校の先輩がスタディツアーに参加したことをきっかけに途上国や国際協力への興味がわき、自分も行ってみたいと思うようになりました。推薦入試に受かってしまったという理由で大学では社会福祉を学ぶことになり、自分の関心と実際に学んでいることのギャップを感じながら、学生時代にはインド、ネパール、カンボジアなどへのスタディツアーに参加しました。
それでも(それゆえに?)諦めきれず、国際開発を学ぶため大学にもう一度入り直しました。

初めてのスタディツアーはインド。このツアーが出発点だったなと今も懐かしく思い出します
(2001年、中央)

「現場」が教えてくれたこと

私はずっと国際協力に興味や憧れを持ちながら、人を相手にし、人の暮らしや人生を「よそ者」である自分が変えてしまうことの責任の重さ、自信のなさから国際協力を仕事にする怖さを感じてきました。同時に、本当に支援を必要とする人たちは選択肢を持たず、どうすることもできないような状況にある中で、自分にはいつでも帰る(逃げる)場所があることに罪悪感のようなものも持っていました。福祉を仕事にできなかったのも同じ理由なのかもしれません。

大学を卒業後、現場をもっと知りたいという思いで、スタディツアーでお世話になったインドの農村に通い約2年を過ごしました。非識字の女性たちと一緒にコミュニティ学習センター(日本の公民館のようなもの)の識字クラスに参加した時には、現地語を読めない書けないだけではなく話せない私が一番劣等生だと笑いながら、女性たちが一生懸命私の名前の書き方を教えてくれました。そして、「人にものを教えたのは生れてはじめて」と誇らしげに言われました。

大学では女性の開発やエンパワメントについて学んでいましたが、彼女の姿を見て、識字は単に文字の読み書きができるようになるということではなく、識字によって本来持っている可能性や尊厳を取り戻すことなんだと実感でき、私にとって教育が基本的人権の一つである本当の意味を知る機会になりました。大学で農村開発を学んだ気になっていましたが、自分には何もできず、私が勝手に「支援が必要な人」だと思っていた人たちから教わることばかりの毎日でした。
インドでの日々の中で私の価値観は少しずつ変化していき、支援はする、されるという関係ではなく、学びあうことを通じてともに課題を解決していくことなのではないかと考えるようになりました。

パートナー団体RRNの皆さんと(2022年)

出会いと経験が私をつくる

シャプラニールに入職してもうすぐ3年が経とうとしています。20年前にスタディツアーで行ったネパールに再びかかわる日が来るなんて夢にも思っていませんでしたが、職員となってからはネパール事業を担当しています。特に防災・減災の活動では新たに学ぶことが多く日々奮闘しています。知識を得てそれを現場で実際に見ることができることはとても面白く貴重な経験であると感じます。
防災の事業はイメージが湧きにくく、身近に感じていただくことが難しいかもしれませんが、ネパールで起こる災害の特徴や自分が現場で経験して感じたことをを分かりやすく支援者の皆さんに伝えられるよう心がけています。

先日、中学生になる姪から、やりたいことをやっているか?と鋭い質問をされ、一瞬考えてしまいましたが、「これまで生きてきた中で一番〝やりたいこと〞に近づけていて、このためにたくさん学校に行かせてもらい、経験を積ませてもらったのだと思う」と答えました。「この道一筋」に憧れるものの全くそんなことはなく、右往左往し、回り道だらけでしたが、遠回りで脈絡がないと思っていたこれまでの経験すべてが今の私をつくっていて、私という人間のあり方や仕事に反映されていると感じます。
これからもたくさんの人と出会い、学び、心を丸く大きく太らせ、もっともっとやさしい人になりたいです。そして、これまで出会った人たちに恩返しとなるような仕事をしていきたいです。


PROFILE

横田好美
大学・大学院では社会福祉と国際開発を学び、インドでのインターンを経験。大学やNGOでの勤務を経て、2021年に海外活動(現事業推進)グループアルバイトとして入職。2022年2月よりネパール事業・ドナー対応を担当。

会報「南の風」303号掲載(2024年3月発行)