2017年10月に続いて、今後の支援の可能性を探るため2018年3月7日から10日までの間、事務局次長の藤﨑文子がコックスバザールの難民キャンプを再訪しました。難民急増から半年が経過した今、難民支援の現状とシャプラニールの支援について報告します。
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1月にシャプラニールと協働して毛布を配布したYPSA(イプシャ、Young Power in Social Action)は、現在ウキア郡クトゥパロン難民キャンプのバルカリ地区で、女性、子ども、シニアのためのスペースをそれぞれ運営しています。
1)女性のためのスペース
現在運営しているのは3カ所、今後4つ増やす予定だそうです。3月8日は国際女性デーであったため、私たちの訪問直前にイベントを行ったそうです。
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センターの飾り付けの様子からイベントの楽しさを感じました。
ここでは健康診断、カウンセリングを受けられる他、皆が集えるミーティングルーム、授乳スペースなどがあります。遠くに用事はなくても立ち寄る人も居るそうです。多くの女性が利用する水浴びと洗い場は、狭くプライバシーのない仮設テント生活を送る人にとっては大切な設備だと思います。
女性たちに人気があるのは技術研修です。ロヒンギャ女性の中から講師6人を募り、30名が縫製研修を受講しています。直しなどをしたいという女性のために、ミシンの使用もできるそうです。今後、使用しているスペースを2つに区切り、研修と一般開放目的に分ける予定とのことでした。
収入の得られる技術を女性たちが持っていることはキャンプ生活が長引いた場合、ミャンマーに帰還できた場合、どちらにしても非常に重要だと感じます。
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ミシンがならぶ研修室
2)子どもを対象とした学びのセンター
2018年1月から開始された子どもを対象とした学びのセンター(以下センター)は、バルカリ地区で100カ所運営中です。学年制はとっておらず、小学校2~3年生くらいの児童が英語、算数、ロヒンギャの言葉を学んでいます。ベンガル人(男性)とロヒンギャ(男性)がペアを組んで教えており、ベンガル人の男性が英語と算数を担当していました。言葉が通じない場合にロヒンギャの男性が通訳に入るのだそうです。ロヒンギャの先生はミャンマーで10年生まで修了。教職の経験はありません。
ここでは一日3シフトとなっていて、登録は毎シフト35名とのことですが、私たちが訪問した日の出席は22名でした。他にも複数のNGOが同様のセンターを運営していますが、就業年齢の子ども約62万人に対し、約1/3はこのようなセンターに来る機会がなく、早急に改善が必要な分野です。
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センターで配られたリュック、ノート、鉛筆を使って学びます
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曜日を記したポスター
3)シニアのためのスペース
50歳以上の男女を対象としたセンターで、医療相談、カウンセリング、レクリエーション、啓発系プログラム(月1回程度)、他機関への紹介等を実施しています。
他NGOが実施している活動に携わる心理カウンセラーと連携して、利用者の悩みに応えています。
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教育を受けた心理カウンセラーの二人。
次回は難民キャンプ視察で見えてきたロヒンギャ難民支援に関わる課題についてお伝えします。
シャプラニールでは現在、今回の現地視察で得た最新情報をもとに、政府や国際機関などの大きな支援から「取り残された人々」を対象に新たな支援を検討しています。
2017年11月23日、ミャンマー、バングラデシュの両政府はロヒンギャ難民のミャンマー帰還に向けた合意書に署名しました。しかしながら、具体的な帰還終了の時期は定まっておらず、ロヒンギャ難民問題は長期化することが予想され、国際社会による継続的な支援が必要とされています。どうか更なるご支援をお願いいたします。
引き続き、皆様からのロヒンギャ難民緊急救援募金および情報シェアのご協力をお願いします。
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