2018年11月上旬、ミャンマー難民支援に携わる職員を対象とした研修を実施するため、事務局次長の藤﨑文子が3回目の現地訪問をしました。難民の大量流入から約1年経過した現場や難民支援の状況、シャプラニールが実施した研修とその中で感じたことを報告(第2回)をお届けします。
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大切にも関わらず後回しにされてしまう心のケア
私は難民の流入が始まってからこれまでに計3回、コックスバザールを訪問しています。最初の訪問となった2017年9月に、ロヒンギャの人々から話を聞いた時から、避難してきた人々の心のケアが必要であると感じていました。しかし当時は、食料や衣類、住む場所の提供が始まったばかりで、「心のケア」を話題としている支援団体は私が知る限りありませんでした。毎日多くの避難者が到着する中で、生き延びるための支援が最優先されたことについては、現実的かつ正しい判断だったと思います。しかし、社会心理的支援の必要性が支援組織の間できちんと議論されるようになったのはロヒンギャ流入から一年近くたった頃と記憶しており、残念ながら対応は遅かったと感じます。
そのようなことから、現場に入り医療支援を行う日本の人道支援NGOピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ)から声をかけてもらい、現場で支援に携わる職員を対象とした研修を実施することが決まったときは、とても嬉しかったです。
1)支援の最前線に立つ職員が自信を持って仕事をできるように
研修会場は、ロヒンギャ難民が生活するキャンプの中でも最大規模を誇るクトゥパロン拡大キャンプの北側にあるISCG(Inter Sector Coordination Group:国連機関およびNGOの支援活動の連携調整を行うグループ)の会議室で行いました。コンテナを改造したこの会議室は、NGOの研修や会議のために貸し出されています。エアコンやプロジェクタが完備され、休憩時間や昼食はすぐ外のオープンスペースを使うことができました。私たちが宿泊するコックスバザールの町から車で1時間強、受講者にとってもアクセスの良い場所となりました。
2)悩み解決の秘策は「コミュニケーションスキル」の向上
研修内容は、PWJや他の国際NGOの現地パートナー団体に所属するバングラデシュ人職員から聞き取った「現場で直面する困難」をもとに考えていきました。参加予定者からよせられた悩みは、「人々が自分の言うことに関心を示してくれない」「クリニックに行くと言いながら、結局来てくれない」など、共通項がありました。ロヒンギャの人たちのためになると、NGOの活動を広げよう、伝えようとすればするほど、空回りしている様子がうかがえます。そこで研修のフォーカスを現場職員のコミュニケーションスキルの向上と決めました。内容はロヒンギャの人たち受けたであろう様々な心の傷(トラウマ)が精神状態に影響を与えている可能性を知り、トラウマに苦しんでいる人を傷つけない接し方を学ぶこと、被支援者から辛い経験を聞くことによって現場の人たちが二次的なトラウマを受けないよう、自分の心をケアする大切さ、の3本柱で構成しました。
<第3回(最終回)に続く>
▼雨の日のキャンプ地にて
配布物資を求めて列に並ぶ人々の姿(2017年9月)
▼ミャンマーから逃れてきた親子
幼い娘は笑うことも言葉を発することもなくなったという(2017年9月)
▼世帯訪問の実施
「女性のためのスペース」の活動を紹介するバングラデシュNGOの職員(2017年10月)
▼アメリカのNGOで働くロヒンギャボランティア
家庭訪問をして妊婦や子どもの健康状態をチェックする(2018年11月)
▼コンテナを改造したISCG会議室にて
研修の準備を行っている様子(2018年11月)
▼初回研修の受講者は全員女性
初日のため少しぎこちない(2018年11月)
次回(最終回)は、現場体験と結びついた深い学びについてお伝えします。
シャプラニールでは現在、今回の現地視察で得た最新情報をもとに、政府や国際機関などの大きな支援から「取り残された人々」を対象に新たな支援を検討しています。
2017年11月23日、ミャンマー、バングラデシュの両政府はロヒンギャ難民のミャンマー帰還に向けた合意書に署名しました。しかしながら、具体的な帰還終了の時期は定まっておらず、ロヒンギャ難民問題は長期化することが予想され、国際社会による継続的な支援が必要とされています。どうか更なるご支援をお願いいたします。
引き続き、皆様からのロヒンギャ難民緊急救援募金および情報シェアのご協力をお願いします。
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