ダッカでの研修の様子

ダッカでの研修の様子

シャプラニールと三菱商事株式会社様の協働事業として、10代半ばくらいの少女たちを主な対象としたコンピューターグラフィックス研修を2017年1月からバングラデシュで開始しました。シャプラニールが支援するディナジプール県、バゲルハット県、ノルシンディ県といった農村部に暮らす少女たちに加え、かつてダッカでストリートチルドレンとして生活していた少女など計10名がダッカに集い、将来のグラフィックデザイナーとしての第1歩を踏み出しました。1回3ヶ月間の研修を8回行い、2年間で80人の少女たちがこの講座を受講する予定です。

バングラデシュはまだまだ産業基盤が弱く十分な雇用もないため、特に地方の、かつ女性が仕事を見つけるのは簡単なことではありません。しかし、デザイン分野の仕事にITを活用すれば、近隣の企業だけでなく遠方の都市部からでも仕事を受注することができ、雇用創出につながることが期待できます。

こういった取り組みをシャプラニールでは三菱商事株式会社様と共に行っています。三菱商事株式会社様がCSR活動費の中から資金提供を行い、シャプラニールがパートナー団体とともに受講者の選定や研修中の生活面のフォロー、地方に帰郷後のサポートといった全体コーディネートを、そして現地企業がコンピューターグラフィクス研修を行うという、まさに企業とNGOの協働によって成り立つ事業です。

このNGOと企業の協働事例を広く知っていただくために、2017年11月24日に東京で、このプログラムを発案してくださった三菱商事株式会社関西支社(元ダッカ事務所長) 片田聡氏を招き講演会を開催しました。当日は高校生から社会人の方までたくさんの方にご来場いただき、NGOと企業が協働した具体的な事例を聞けて良かった、企業とNGO双方の意見が聞けてよかったといった感想が寄せられました。この事業を通じて研修を受けた少女たちの中には、すでに新たな職を得て、動き出した少女たちがいます。今回はその中から2名の少女をご紹介します。

②Sahanaz_1シャハナズさん:シャハナズさんは4年前に唯一の稼ぎ手であった父親を亡くました。それ以来「真っ暗で救いのない穴に落ちたようだった」と言います。研修のために生まれ育った村から離れて暮らすことに恐怖を感じつつも、3ヶ月の研修を終える頃には「バングラデシュだけでなく、世界の一員になれた気がします」と自信を持って語ってくれました。今は現地NGOにスキルを高く評価され、職を得ました。今後さらに技術を高め、将来はテレビ番組制作の仕事に就くのが夢です。
③Ruth_2ルースさん:ルースさんは先住民族の家庭に生まれ、両親は二人とも日雇い労働者です。学校に行く機会のなかった兄や両親は「せめて末娘だけは」と、苦労してルースさんを高校まで通わせてくれました。卒業が近づいた頃に研修の話があり、両親とルースは一も二もなく参加を決めました。そして3ヶ月後、ルースは見事現地NGOのデータ入力の職を得、カレッジに通いながら仕事をしています。「今はパートタイムだけど、学校を卒業して、必ず良い勤め先を見つけます」と語ってくれました。

三菱商事株式会社 関西支社/前ダッカ事務所長 片田聡氏
OLYMPUS DIGITAL CAMERA利益追求が目的の営利企業であっても「利益だけあげればいい」という時代ではありません。海外、特に後発途上国では「この国で仕事をさせていただいている」という気持ちを持つことが、文化も違う地で活動できる根本だと思います。営利企業にとって利益の一部を何らかの形で還元することは、社会活動上必要なことだと思います。ただモノやカネを贈るだけでなく、地場の企業・団体・社会が営利企業のCSR活動を「きっかけ」として、自ら持続可能な活動を継続でき、それを通じて地域の皆様が自ら向上できる、そういった還元こそが企業CSR活動の理想だと思います。

シャプラニールとは元々お付き合いがありましたが、今回は三菱商事のCSR活動にご協力いただき感謝しています。シャプラニール、現地企業のMASK Interior両方にとって「Win-Winの関係」となる、持続可能な事業の「きっかけ」を提案できたと考えていますが、今後本当に「Win-Winの関係」が継続できる事業になるかどうかはまだまだ予断を許さないと思います。三菱商事としても本事業の成功のために、引き続き連携していきたいと考えています。