サンタル族のお客さんにお茶を提供する茶屋の店主

サンタル族のお客さんにお茶を提供する茶屋の店主


タルクプール地域には先住民族のサンタル合計27世帯が住んでおり、全ての世帯が日雇い労働で生計を立てています。私たち事業スタッフが2014年8月にこの地域を訪れ、プロジェクト開始前の状況調査を行った結果、サンタル族コミュニティが抱えている数々の問題が明らかになりました。例えば、集落の中にトイレや手洗いなどの衛生設備がなく、就学年齢に達した子どもが誰も学校に通っていません。保護者は地域の役場と関係を持つことをためらい、本来受けられるはずの公的サービスも受けられない状態でした。

更に、サンタルの人々はこの地域でベンガル人が経営している茶屋をかなり前から利用させてもらえずにいることが分かりました。なぜ利用させないのか、私たちは茶屋の店主に訊ねてみました。すると「サンタルの人たちはトイレや手洗い場もないところに平気で住んでいて、小さな子どもたちを学校にすら行かせない。衛生観念も教育の考え方もあまりに違う。だからうちの店は使わせないんだ」という返事でした。

2016年4月から14地域を対象に“OUR SCHOOL”事業を開始しました。タルクプールもその1つで、サンタルの子どもが小学校に入学し、通学し続けられる環境を作るため、学校教師やベンガル人を含む地域の人々、地方行政とも協働しながらさまざまな取り組みを続けています。2017年には活動拠点としてコミュニティベースのラーニング&カルチャーセンター(CLC)を設立しました。

その結果、サンタルの保護者の教育に対する意識は変わり、今では全ての子どもが学校に通っています。成績は上がり落第者も出ていません。役場とのつながりもでき、公的サービスを受けられるようになりました。27世帯のうち、15世帯はトイレを設置しました。周辺に住むベンガル人世帯からは、自分たちの子どももCLCに通わせてもらえないか、という声が上がるようになりました。
そして、これらの変化を目の当たりにした茶屋の店主は、サンタルの人々を客として認め、店を利用させてくれるようになりました。今、サンタルの人々はベンガル人の客と同じ椅子、同じテーブルでお茶や軽食を楽しむことができます。これは小さな変化ですが、この変化はタルクプールのサンタル族の自信と尊厳を深め、地域の公平性の確立に貢献しています。

ラッキー・マランディ
(GBK・プロジェクト・コーディネーター)