「でも、どこに置いておいたらいいのかしら?」

「玄関じゃない?」

「いざとなったら、持って行くの忘れちゃいそう」

さて、これは何についての会話でしょう?ちなみに私は寝室の出口付近に置いています。そう、これは非常持ち出し袋のことです。こちらでは、英語のGo Bagと呼ぶことが多いです。

2019年1月4日。この日カトマンズ盆地のラリトプール市の防災学習センターで開かれた、周辺住民向けの地震啓発研修時の会話の一コマです。講師はその地域の住民で、これまでに防災研修講師の経験を積んだ男性で、約40名の参加者の多くが女性でした。この研修は市の区ごとに住民に呼びかけて行ったのですが、その区によって男女比は異なっていました。

内容は、小さいころから地震と防災について学んできた日本人からするととても初歩的なことから始まります。例えば、こんな風です。

地震が起きるのは、決して神様が怒るからではない。地球はプレートに覆われているんだよ。インド側のプレートがユーラシアプレートの下に潜り込んで、そのたまった力がボンと発散されると地震になるんだよ。圧力鍋もずっと火にかけすぎするとボンと爆発するでしょう?

ユーモアを忘れずに、理科になじみのない人にもわかるように話を進めていきました。 そして、地震の仕組みを知った後には、自分の身を守る方法を学びます。家の中で高いところに重いものを置いていないか?、地震が起きたらまずはどこを守ったらいいか?(→頭)、台所の火は必ず消すべきか?(→まずは自分の安全!)、などなど。

この日、集まった人々の地区では2015年の大地震で4名が亡くなっています。笑い声の絶えない研修でしたが、2015年の地震時にこの地域で何があったかを話すときの表情がぐっと引き締まったのが印象的でした。学んだこと全てをいっぺんに行うのは難しいでしょう。でも、できることから始めて言って欲しいと思います。

ネパール事務所長 勝井裕美