報告/ネパール事務所 シニア・プログラムオフィサー キル・ガレ
ネパールでは、経済の不安定さから多くの若者たちが職につけていないことが大きな社会問題となっています。海外へ出稼ぎに行く人も多く、2023年は90万人が出稼ぎのために母国を離れています。また職につけない若者は、違法薬物や売春等の犯罪に巻き込まれることも多く、また精神疾患者も増えていることも挙げられています。そこで私たちは、この若者を取り巻く問題について向き合いサポートができないかと、ネパール事務所で働くことになった大学生のインターンのカルナさんとともに調査を始めました。
不十分な若者支援
まず若者への支援をしているNGO数団体を訪問し、彼らの活動についてインタビューしたところ、キャリアカウンセリングや職業訓練などを行っていることがわかりました。さらに、インタビューを重ねる中で見えてきたことは、若者を取り巻く問題は年々深刻化してきていること、問題の要因が社会の多岐に渡るため、明確な支援ができていないということでした。またネパール政府は若者支援のための要領を策定しているが、現実には実行されていないという答えも多くありました。
届かない若者の声
次に若者60名へのインタビューと座談会を行いました。大学院生、レストラン従業員、学校を卒業しても職につけていない若者など、さまざまな立場の人と語り合いました。メディアで若者の問題は毎日のように聞くが、自分たちが社会の中で孤立してしまっている現状をおとなは本当に改善しようとしているのかという疑問や、自分たちの声を社会に届け自分たちも問題解決に携わりたいという声も多く聞かれました。確かに若者が主体となって問題解決をめざすといった取り組みは、政府を含め現時点ではあまりありません。
シャプラニールは若者自身が主役となるような伴走支援をし、問題の解決につなげるという方法もあるのではないかと考えています。引き続き調査を行い、新たな活動の立案を進めていきます。
若者の声
座談会に参加して感じたこと
トリブバン大学 ジャラナ・ジリさん
“私は半年後に大学を卒業しますが、就職先がきまっていません。ネパールは企業が少なく、しかも経済の不安定さから多くが採用を行っていません。海外に就職したいと思いますが、エージェントへの手数料、飛行機代など、私の家では資金を用立てられません。毎日将来と今の不安を感じています。座談会に参加して、この状況は私一人ではないと感じて気持ちが軽くなりました。今回できた仲間とつながって不安を話し合うことができたらと思っています”
会報「南の風」304号掲載(2024年6月発行)