「すべての子どもたちが学校に通うためのプロジェクト」はCOVID-19感染拡大の最中に開始しました。学校は閉鎖され、子どもたちは教育を受けられず、親たちの多くは職を失いました。子どもたちは13カ月間、学校教育から離れており、公用語のベンガル語を母国語としないサンタル民族の子どもの多くがアルファベットと数字、そしてベンガル語の文字を忘れてしまいました。
そのため、スタッフが家庭訪問をして勉強を教えたり、学校が再開してからは、再び子どもを学校に通わせてもらえるように保護者に働きかけをするなどしました。現在、入学率は100%で、中退率、留学率も事業開始時に比べ減少し、子どもたちは学校に通い続けています。
事業の中では、サンタルの子どもたちが公立学校の勉強についていけるように補助的な教育ができる場として、またサンタルの文化を学ぶ場としてのコミュニティ・ラーニング・センター(CLC)を設立し、地域の人びとでこれを運営していけるように委員会を結成しました。この委員会メンバーが行政との情報共有や連携ができるように関係構築ができるように支援もしています。
サンタルの子どもたちは学校教育を受けるときに言語の壁や、貧困など教育の継続を妨げるさまざまな課題に直面しています。これらの課題を最小限に抑えるために地域での支援の他、先住民の子どもたちの教育を取り巻く課題を訴えるような働きかけを中央政府にしていくことも重要だと考え、活動しています。これからも先住民の子どもが抱える教育上の課題を学校、地域住民、行政が理解し、それぞれの立場で教育環境の改善に取り組めるようになることを目指して事業を進めていきます。
《子どもの声》
本が読めるようになったよ!
ナオミ・ソレンさん(小学4年生)
2020年のCOVID-19感染拡大の時には学校が閉鎖され、村の友達と遊んだりして過ごしていたため、数を数えることも文字を読むことも忘れてしまいました。CLCで教育ファシリテーター(※)の先生が補講をしてくれたので、少しずつ忘れていた勉強を思い出すことができました。一度は教科書に書いてあることが読めなくなってしまったのですが、いまでは教科書をちゃんと読むことができます!将来は学校の先生になることが夢です。勉強の習慣を取り戻せて本当によかったです。
※学校の授業に遅れずについていけるように補習教室を担当する有償ボランティア
報告/プロジェクト・コーディネーター(GBK)ラッキー・マランディ
事業概要
2021年3月開始。事業地はディナジプール県とノルシンディ県の2カ所。子どもへの直接的な支援だけでなく、地域、行政が課題に気づき、それぞれの立場から地域の教育環境の改善に取り組む事業。本記事ではディナジプール県のサンタルの子どもたちに向けた活動を紹介。
会報「南の風」301号掲載(2023年9月発行)