バングラデシュにおける初等教育のギャップを埋める活動の評価作業で現地を訪問しています。2カ所の事業地のうち、今週はバングラデシュ北部にあるディナジプール県で、評価のためのインタビューなどを行いました。
この地域では特に、先住民族やダリット(不可触民)の子どもたちが言葉や経済的困窮により初等教育を十分受けられていない状況を改善するための取り組みを進めてきました。大多数のベンガル人と比べて、経済的にも社会的にも厳しい状況に置かれており、プロジェクト開始前は子どもたちのほとんどが学校に通っていない集落もありました。
プロジェクトを通して、CLC(コミュニティ・ラーニング・センター)が各集落に設立され、毎朝登校前に子どもたちが集まって、2時間ほど前の日の復習や宿題に取り組んでから学校へ行きます。子どもたちに話を聞くと、「眠たくて朝早く起きるのが面倒くさいと思うこともあるけど、先生の顔が浮かぶと『行かなきゃ!』と思い、頑張って通っています」と答えてくれました。
ここでいう「先生」の役割を果たしているのが、有償ボランティアとして毎朝子どもたちの勉強を見てくれるエデュケーション・ファシリテーター(以下ファシリテーター)です。
マッラパラという集落にあるCLCで、ファシリテーターとして活躍しているアドリ・キスクさんは、医療系の大学で学ぶ学生です。プロジェクトが始まるとき、ファシリテーターを探しているという話をきいて、すぐに手を挙げたそうです。子どもたちはみんな喜んでCLCに通っていて、子どもたちが少しずつ勉強できるようになって良い成績をとると、自分も嬉しいと話してくれました。実際に、40人のクラスで2番目、3番目の成績をとった子どもたちもいます。「以前は、お父さん、お母さん両方が農業の日雇い労働などで朝早くから家を空けるため、学校へも行かず、一日中遊んでいる子どもたちが多かったのですが、今は学校へ通っていない子どもはいなくなりました。私は高校や大学で決まった教科しか勉強してこなかったのですが、子どもたちに全教科を教えなければならないので、自分にとっても勉強になります。この活動に参加して子どもたちやその親たちと関わる中で、人との接し方が変わってきたと思います」と語るアドリさんのやさしい笑顔がとても印象的でした。
事務局長 小松豊明