「私には洪水の辛い記憶があります。2014年8月20日にバンダムムレ川で起こった洪水は、隣村に移動中の女性を飲み込んでいきました。洪水による死亡者がでたのはこの1度だけではありません。過去にラクタニ川で起こった洪水でも男性が押し流されています」
海外で働く夫と娘2人、息子1人を持つマディ市在住のマトゥラ・ ダカルさん(40歳)は、家族のサポートを得ながら、自分の集落の地域災害リスク管理委員会(CDMC)などのさまざまな委員会で活動しています。彼女は10年生までしか学校に通っていませんが、地域の人々から委員会の活動を通じて地域のために働いてほしいと依頼されたと言います。
彼女はCDMCのメンバーとなり多くの知識を得ました。「災害発生時、まずは私たち自身の身の安全を確保しなければならないことを学びました。そして、市民証書などの重要な書類を守らなくてはいけません。子どもや高齢者、障害者は優先的に避難支援を受け、私たちも安全なところに避難する必要があります。また、警察や軍、赤十字などにも助けを求めることができるようになりました。災害時に備え、私たちは事業を通じてこの地域のハザードマップや危機管理計画を準備しています」
さらに、彼女は過去の洪水体験を話してくれました。「昨年の洪水は私の家の庭にも流れ込み、田んぼを飲み込んでいきました。幸運にも人的被害はありませんでしたが、近所の家は危険な状況でした。私たち地域住民で枝を集め、その上に石を置き川の流れを抑えることで被害拡大を食い止めようとしました。」
洪水の問題に直面したマトラさんは、コミュニティの人々と共に1世帯あたり500~2,000ルピー を集め、洪水被害を抑えるために川に土堤を建設しました。しかし、彼女はそれだけでは持続性がないと感じています。「以前、私たちは土堤を建設しましたが、洪水で破壊されました。年々川底が上昇しているためです。この地域には強靭なインフラもありません。強固なインフラ建設を行い、長期的に洪水被害を減らす必要があります。私はその夢を実現させたいです」彼女が本活動にかける想いは強いのです。
キル・ガレ
(シャプラニール カトマンズ事務所プログラム・オフィサー)
1ルピー=1.72円(2017年9月15日時点)