気候変動による水害リスクに強いコミュニティづくりを目標としたネパール・モラン郡での洪水防災事業では、学校の防災力強化にも取り組んでいます。

活動地で対象としている川のすぐそばには学校があります。川には橋が架かっておらず、増水時には子どもたちが学校に通えなくなったり、洪水が発生すると校舎にも被害が及ぶ恐れがある状況です。
川岸の浸食を防ぐインフラを設置するという対策も行っていますが、何より学校として洪水時の対応を計画し、備えておく必要があります。
これまで、学校では洪水発生時の対応について特にルールや判断基準などが設けられておらず先生方1人ひとりの判断にゆだねられていました。

川のそばに建つ学校
川のすぐそばに立つサンパクワ中等学校(手前が川、奥の赤い建物が校舎)

2024年1月16日から18日までの3日間、スンパクワ中等学校で、サンパクワ中等学校とサラスワティ初等学校の児童生徒、教員、学校運営委員会を対象に防災と気候変動に関する研修を実施しました。この研修は、1.災害リスクと気候変動に関する知識を得ること、2.学校の安全に関する基本的な法律や規則、防災分野における実施指針について知ること、3.様々なツールを用いて、学校内のリスクを特定するスキルを身につけることの3つを目的とし、29名が参加しました。

参加者の集合写真
研修に参加した皆さん(性別や民族など偏りがないように配慮された)

研修内容

  • 1日目:災害リスク軽減(DRR:Disaster Risk Reduction)に関する基礎、ネパールの災害やネパール政府の対策・政策について学びました。政府の取り組みが学校にどう関係しているかという検討も行われました。
  • 2日目:様々な事例をもとに自然災害と人為的災害の区別や気候変動と災害の関係について講師から紹介があり、その後、学校の災害に対する安全性や災害発生時の学校の対応について話し合われました。特に障害のある生徒や女子生徒への配慮についてもインクルーシブ防災という視点から活発に議論されました。
  • 3日目:早期警戒システムについて話し合われました。早期警戒システムとは気象レーダーなどの観測機器の整備、データの分析や災害の予測、災害発生のリスクを伝えるためのネットワークの構築といった技術を指します。ネパールでは観測機器の整備や災害の予測がまだまだ不十分な状況です。研修では洪水が起こりそうであるとどのように判断し、それをどう伝えるかが議論の焦点となりました。洪水の予測については行政の役割や上流部との連携の重要性が指摘され、ラジオなどのマスメディアを通じた情報伝達の他、SMSの効果的な利用についても話が広がりました。

話をする講師
災害メカニズムに関する講習
話し合いをする参加者
インクルーシブ防災について話し合いました。

最後に来年度の活動に向けたセッションが行われ、防災計画に必要なリスク分析や学校における防災活動に必要なことについて話し合われました。
異なる年齢層が参加したため、それぞれの理解度に対応した研修資料を作成したり、ネパール語に訳して用語を説明したり、様々な事例やクイズを活用するなど、研修の進め方が工夫されました。子どもも大人も災害に関する基礎から自分たちの学校での防災まで、さまざまな知識を得ることができたそうです。

来年度は学校での防災計画の策定や、ハザードマップの作成、避難訓練の実施などを予定しています。引き続き学校の防災力の強化を進めていきます。

事業推進グループ/ネパール事業担当 横田 好美