私たちのような組織が開発支援活動を行う際、その持続性をいかに高めるかということは、世界的に見ても大きな課題になっています。シャプラニールはもちろん、ネパールのNGOであるRRNでも、村に存在するすべての問題を解決することはできません。そこで「住民の能力強化を通じた災害リスク軽減プロジェクト」を始める際、私たちはその目的を、村人自身が洪水に関する情報を利用し、対応できるようになるための能力育成におきました。そのことで、住民がやがては私たちからの支援に頼らず、自分たちで主体的に課題解決に向けた取り組みを進めていけるようになる、と考えたからです。
中心となる活動として、集落の防災計画を住民自身が作成できるようになることに取り組んでいます。洪水の危険な場所などを示すハザードマップを作ったり、災害弱者の存在をみんなで確認したりすることから始め、防災に役立つ施設や行政による支援策のリストアップなどを行い、2012年12月には13の防災計画が完成しました。しかし、最初は行政に要求をつきつけるための単なる希望リストになっていて、住民がどう活用すればいいのか分からないものになってしまい、評判も最悪でした。でも、防災は行政と住民、その他の関係者が協働して解決すべきものだという理解が進み、翌2013年11月にできた改訂版は、現実を反映したとてもいいものになりました。
計画の策定に参加した村人は全部で1,674人(女性756人、男性918人)。自分たちでできることと、外部からの支援が必要なこととが一目瞭然で、これを見た地方行政から、約21万円相当の資金支援を得ることもできました。自ら労働力を提供するなどして洪水対策を進めた結果、これまでに382世帯(2,026人)の住居と117ヘクタール分の農地が、自然の脅威から少しでも守られるようになるという安心感を得ることができています。
私たちの活動成果のほとんどは意識の変化など、目に見えるものではありませんが、行政による理解も徐々に深まり、開発計画の中に組み入れようとしてくれつつあります。
ラリット・バハドゥール・タパ(プログラム・オフィサー)