先日、現地レポートで、ネパール・マクワンプール郡での児童労働削減事業の一環として実施している技術研修支援を受けている子どもたちの声をお伝えしました。(レポートはこちら) 今回は、支援している家庭や職業訓練の現場の様子をお伝えします。
技術研修支援によって広がる可能性
子どもを児童労働に出さなければならない理由の一つに、経済的な問題があります。貧困家庭の中には、カースト(階級制度)の影響で理不尽な差別を受けている方もいて、手に職を持たないまま各地を転々としているご家族も多くいます。また、小作農として、家族がその日に食べるのも満たない作物を作って暮らしており、子どもを学校に通わせる余裕はありません。そんな中で、私たちの事業で行なっている、手に職をつけ、安定した現金収入を得るための技術研修支援や収入向上支援は大きな意義があります。
美容師の技術研修もその一つです。ネパールの農村地域でも美容院に通う人は多くなっており、美容師の仕事は生涯に渡って生活を成り立たせます。技術研修は夢を持って仕事をしたいと思っている方々の可能性を広げる機会でもあります。
裁縫の研修にも多くの方が参加しています。ネパールでは、着ている服が古くなったとしても、すぐ新品に買い換えずに、裁縫店で修繕してもらい大事に長く着るという習慣があります。裁縫のスキルを身に着けることで、将来の選択肢が増え、子どもたちに希望と実利をもたらします。
子どもたちだけでなく、家族のサポートも
私たちの事業では、子どもたちへの技術研修支援だけではなく、保護者への収入向上サポートを行い、現金収入を安定して得られるようにすることで、子どもを児童労働に出さず、学校に通わせられるよう支援しています。こちらの写真にあるように、家畜を提供し、畜産のスキルを身に着けてもらうのもその一つの例です。
子どもたちがラジオで児童労働削減を呼びかける
また、各地区で活動している10歳〜16歳の子どもクラブのメンバーにラジオ放送で児童労働撲滅を訴える番組を制作するスキルトレーニングを行っています。ネパールの農村で貴重な情報媒体であるラジオ。ラジオ制作の専門家が子どもたちを指導し、毎週番組を制作しています。
このラジオ番組を通じて、多くの人たちに、児童労働削減への関心を高めてもらうとともに協力を呼び掛けています。番組内では技術研修支援や収入向上支援を受けた人たちへインタビューも度々行っています。そこで聞かれる多くの声は、「お米やお金をくれる一回きりの支援でなく、手に職を着けさせてもらえることは、本当の意味で助けになる。」ということです。
現場を歩き、多くの方々と本音で話し合う中で、「このプロジェクトが生きていく術(すべ)と夢をもたらしている」といった声を聞くことができています。私たちは、一人ひとりの声をプロジェクトに反映させながら、これからそれぞれの家庭の状況に合わせ必要な支援を届けていきます。子どもたちが笑顔で、健康で、教育を受けられるように、今後とも活動を進めていきます。
ネパール事務所長 竹下裕司