バングラデシュ では、2017年から沿岸部2つの郡で実施している防災事業は、防災管理委員会の能力強化と連携によって災害に強い地域になることを目的としています。3年間の事業も終盤に近付き、支援対象の防災管理委員会において、さまざまな自発的な活動が行われるなどの成果が見えてきています。

2020年5月にサイクロン・アンファンが来た際、郡レベルの防災管理委員会は県の防災管理委員会の助言を受けながら、その下位レベルのユニオン(行政村)の災害管理委員会、地域行政、NGO、地域住民と連携した緊急対応を行いました。その結果、サイクロン被害を最も受けやすい地域と災害弱者に対して早期避難情報を伝えることができ、住民は非常食や飲み水を持って前もって避難することができました。

ユニオンで行われた避難訓練。避難要援護者の避難方法の確認をしている様子。

ユニオンで行われた避難訓練。避難要援護者の避難方法の確認をしている様子。

ユニオンから郡へ、郡から県にといった具合に各行政レベルに設置されている災害管理委員会同士が被害状況を逐次報告したため、被災状況が全体でしっかりと共有されました。その結果、例えば議員や県行政官は堤防決壊状況を実際に視察に訪れたり、県レベルの代表者が一番被害の大きかったユニオンに視察に入るなどといった具体的な行動が見られました。また、視察だけに留まらず、予算配分の権限を持つ県や郡が、防災活動予算から避難している人たちに対して非常食など緊急救援物資を配布するといった決定をすぐに下しました。

このように県や郡の行政官や議員の人たちが実際に被災地を視察して状況を確認することは今までにはなかったことです。県、郡、ユニオンといった各行政レベル間で災害管理委員会の連携した動きが見られ始めたことは、この地域が災害に強い地域になっていくことの大きな一歩であると感じています。今後の更なる変化に期待しています。

モハマド.アニスザマン
バングラデシュ事務所 プログラム・オフィサー

この情報は2020年9月頃時点です。会報290号に掲載しています。(2020年12月発行)

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